銀行員の評価はどう決まるのか。昇進や給料を気にする従業員でもないのに、銀行の人事評価の仕組みを熱心に調べ始めた人物がいる。銀行の監督官庁である金融庁の職員たちだ。
3月上旬、金融庁は全国に105行ある地方銀行の約半数から、人事評価体系の資料やデータを取り寄せた。そして、その分析結果に基づいて、4月から各銀行と議論を開始したのだ。
金融庁の狙いは、銀行の面従腹背を阻止することだ。現在、金融庁は銀行に対して、企業の事業が持つ将来性を目利きすることによる融資判断を求めている。銀行が担保や保証に過度に依存し、取りっぱぐれの少ない超低リスクの世界に安住していることで、融資が企業へ適切に行き届いていないという問題意識が金融庁にはある。
銀行にとって監督官庁は畏怖の対象だ。多くの銀行は金融庁との議論やホームページの中で、その問題意識に合わせた美辞麗句を並べて自らの取り組みについて語る。ただ、「営業現場で実態が伴っていない場合が多い」(金融庁幹部)。銀行経営陣の本気度はどれほどのものか。その解明に本腰を入れた金融庁は、銀行の人事評価体系が調査の鍵だと見定めた。
“人参”の位置で動く現場
「非常に痛いところを突いてきた」。ある大手地銀の幹部は、金融庁の新たな動きをそう評する。
「営業現場は経営陣が発する理念や戦略といったきれいごとでは動かない。人事評価という“人参”をぶら下げる位置を変えることで、初めて動く」(前出の大手地銀幹部)。だからこそ、経営戦略と人事評価体系は一体であるのが本来の姿。言葉で何を語ろうが、経営陣の本心は人事評価体系に表れるといっても過言ではない。
そのため、金融庁には「融資量は追わずに課題解決型の営業に移行している」と言いながら、人事評価体系は融資量に比重を置いた旧来型のままといった「経営戦略と人事評価体系の矛盾を突かれれば、銀行は立つ瀬がない」(同)。