経営 X 人事
中原淳のグローバル人材育成を科学する
【最終回】 2017年4月20日
著者・コラム紹介 バックナンバー
中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授]

海外赴任者が帰国後に退職してしまう理由

海外帰任者が辞めてしまう理由とは?

 正解は(3)の25%です。

 海外の調査ではありますが、実に4人に1人の割合で海外赴任者が帰任後2年以内に辞めてしまっているというわけです。日本人はそこまで高い割合ではないかと思われますが、同じような傾向は確かにあるのではないでしょうか。

 実は、海外赴任の帰任後というのは、キャリア論では中立圏(ニュートラルゾーン)という時期に当たります。中立圏とは、簡単に言うと「何かが終わる時」と「何かが始まる時」の間の「宙ぶらりんの時期」ということです。

 この時期を過ぎるとまた、新しい環境への再適応ができるようになってくるわけですが、この「宙ぶらりんの時期」というのは、空虚感に包まれ、アイデンティティを喪失し、場合によっては退職の可能性が高まってしまう、人事的には極めて危険な時期なのです。

 海外帰任者は、なぜ辞めてしまうのでしょうか。

 先ほどの調査研究(Lazarova and Caligiuri 2002)によると、「海外に比べて挑戦性のない仕事が割り当てられた」、「海外で培った獲得したスキルが生かせなかった」、「海外に出ている間に昇進機会がなくなった」、「海外のように自立的な仕事を行うことができなくなった」「キャリアが不透明になった」「同僚、本社の人的ネットワークからの離脱」「本国文化への逆適応への失敗」といった理由が挙げられています。また、「同僚からのやっかみ」といった理由もありました。

 どれも、本国で働き続けている人からすれば、「やむをえないこと」ではあるのですが、帰任者にとっては、それがどうしても我慢ならないこととなってくるようです。

経営 X 人事 特集TOPに戻る

 

 

中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 


中原淳のグローバル人材育成を科学する

国内市場は縮小し、内需拡大の限界に直面しつつある今、成長が期待されるグローバル市場に乗り出していく人材の育成は、多くの日本企業にとって、今もこの先もますます重要な課題となっていく。にもかかわらず、日本企業の「グローバル人材育成」はどうも問題があるようだ。そもそもグローバル人材育成とは何か? どのように実現するものなのか? 形だけでなく、真の意味で企業の成長につながる「グローバル人材育成」のあり方を見直し、考えていく。

「中原淳のグローバル人材育成を科学する」

⇒バックナンバー一覧