自治体の財政難のあおりで
全国からSLが消えていく

 一方、日本はどうかというと、「文化財を観光資源として活用する」という発想自体があまりない。国や自治体は「貴重な国民的財産を守る」という社会的意義のみで予算を出すので、財政難に陥ると真っ先に予算を削る。結果、少ない予算を、国宝や重要文化財という指定をとりつけたところへ広く薄く分配するので、個々の文化財は崩れたら修理するという対症療法的なメンテナンスがやっと、という状況になる。

 傷みの激しい古い建物や遺跡に、見学順路の矢印と教科書みたいな解説板のみが立てられるという状況なので、「歴史好き」しか目を輝かさず、観光客がお金を落とす場所すらない。収益を上げられないので、さらに予算も減っていくという悪循環に陥る。そして、最終的には放置され、どんなに歴史的価値のある文化財であっても、誰も手を差し伸べることなく、ひっそりと姿を消していく。

「嘘だ!日本人ほど伝統文化を大切にする国民はいないんだ!」という愛国心あふれるクレームが飛んできそうだが、事実として、全国のいたるところでその兆候があらわれている。

 わかりやすいのがSLだ。明治期から昭和という日本の近代化を支えた蒸気機関車が、後世に遺す「貴重な国民的財産」ということに異論を挟む人はいないだろう。

 ただ、その現存している産業遺産が、全国で相次いで鉄くずにされているのをご存じだろうか。その多くは、みなさんも一度は見かけたり、遊んだりしたことがあるであろう「公園のSL」だ。

「銀河鉄道999」などを見ていた世代ならよく分かると思うが、1970年代にSLブームというものがあった。その人気にあやかって、同時期にお役御免になるSLを全国の自治体が引き取った。といっても走らせるわけにもいかないので、その多くは児童公園などにぽつんと野ざらしで置かれた。

「全国の公園などで展示されているSLは約580両。博物館以外のものはほとんど自治体が管理、展示している」(朝日新聞 2016年10月19日)

 そう聞くと、もうお分かりだろう。少子高齢化で税収も厳しい自治体にとって、「公園のSL」を維持する予算はない。修理もできないとなると、ただの危険な鉄の塊である。そこで壊してしまおうという決断を下す自治体が相次いでいるのだ。