総務省「住宅・土地統計調査」(2008年)によれば、今や全国の空き家率は13.1%。8軒に1軒は空き家という、世界でも突出した「空き家大国」であることがわかった。一方、新築住宅の着工戸数は毎月6~7万戸にのぼる。

 だが、住宅余りの時代にもかかわらず、そうやすやすとマイホームは手に入らないのが現実。先行き不透明というのに、はたして重い住宅ローンに耐えられるのだろうか……?

――この連載では、震災後の“問題の現場”を知る2人のインタビュイーが登場。それぞれの立場から混迷期のサバイバル術を語ってもらう。第4回目のテーマは「家」。パラダイムシフトの時代、私たちは住宅についてどう考えるべきなのだろうか。

「色眼鏡を捨てる」 榊マンション市場研究所 榊淳司さんの話

中国人富豪たちが
タワーマンションから逃げ出す

榊淳司さん 同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。不動産広告、販売戦略立案の現場に20年以上携わる。2008年、榊マンション市場研究所を設立。著書に『年収200万円からのマイホーム戦略』

 ベイエリアのタワーマンションから、中国人が次々に逃げ出している――。

 こう打ち明けるのは、住宅ジャーナリストで「榊マンション市場研究所」榊淳司さん。購入を申し込んだばかりの中国人も、支払った手付金を断念し、キャンセルしているという。

 震災直後、エレベータがストップするなどし、多くのタワーマンション入居者が「高層難民」と化したのは周知の通り。さらに液状化への懸念とあいまって、従来の湾岸タワーマンションの人気にはかげりも生まれた。だが、関係者が気に病んでいるのは、国内の風評問題ばかりではなかったのだ。

 住宅価格はバブル崩壊後、下落し続け、2002年に底を打った。その後いったん回復し、2007年にピークを迎えて、再び下落傾向に。光明は「チャイナマネーの流入」だった。

「中国には土地の私有制度がないこともあり、日本の不動産は彼らにとってうってつけの投資対象でした。利回り(投資した元本に対する収益の割合)は、さほど高くないが安定しており、担保価値が高い。ある物件の上層階では、中国人オーナーが2ケタに達していたそうです」(榊さん)