苗場泉郷コンドミニアムホテル(旧ホテルアンビエント苗場)一見すると普通のホテルだが、客室ごとに区分所有権が設定されている「苗場泉郷コンドミニアムホテル」。運営していた泉郷が撤退して十数年、区分所有者たちは利用することはおろか、中に入ることもできずに、ただ固定資産税だけを毎年払い続けている

バブル期のリゾート地では、「区分所有型ホテル」がさかんに建設された。客室の区分所有権を取得したオーナーが、そのホテルの運営事業者と部屋の賃貸契約を結び、月々の賃料を受け取るシステムである。たとえホテルの経営が不調になったとしても、「不動産の所有権」を持つことでリスクをカバーできる……そんな投資商品の「現在地」を追った。※本稿は、吉川祐介『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)の一部を抜粋・編集したものです。

分譲販売を手掛けた会社は
廃墟ホテルから社名だけ消した?

 苗場エリアを貫く国道17号線沿いに、今もその灰色の躯体をさらし続ける、「苗場泉郷コンドミニアムホテル(旧ホテルアンビエント苗場)」跡(以下、苗場泉郷ホテル)がある。

 1990年(平成2年)に、客室ごとの区分所有権を販売する形で分譲が行われた区分所有型ホテルである。

 苗場泉郷ホテルの分譲販売を手掛けていた株式会社泉郷は、89年以前は株式会社八ヶ岳中央観光という社名で、文字通り八ヶ岳周辺で別荘事業を行う傍ら、「泉郷」の名を冠したホテルの運営事業を展開していた。

 2000年頃より業績が悪化し債務超過に陥り、03年にセラヴィグループの子会社となった。現在のセラヴィリゾート泉郷はその過程で派生したグループ企業の1つで、会員制リゾート施設の運営事業を手掛けていた。

写真3-10:豪雪地帯のため建物の劣化速度が速い。フェンスは湯沢町役場の指導によってのちに取り付けられたという同書より転載  拡大画像表示