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香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第8回】 2011年6月3日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

起きてしまった現実を「なかったこと」にして、
乗り越えられるのか

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中途半端な状態をどう扱っていいかわからず
「なかったことにする」

 浜岡原発が稼働を停止しました。

 停止要請を出す最大の根拠として菅首相が持ち出したのは、「今後30年間に東海地震が起こる確率は87パーセント」という数字です。それ以外にも、首都直下型地震が起こる確率が「30年間で70パーセント」という情報が駆け巡っています。

 30年間で87パーセント、30年間で70パーセントという数字は、高いと言われれば確かにそんな気がします。しかし、その数字が現在の行動を決定づける要因になるか、その数字に信頼性があるのかと問われると、人々のこころは揺らいでしまいます。

 中途半端な曖昧さが原因です。

 100パーセントであればすぐにでもできるのに、70パーセントの確率で大地震に襲われることを前提にしたライフプランを立てることは、日本人にはできません。考えても考えても、答えは見つかりません。前にも書きましたが、私たちは白黒つけにくい問題に対して、とても脆くなっています。

 やがて考えることに疲れてしまうと、いっそのことそんな数字など「見なかったこと」にして、マンションも買えば会社も起業するといった長期的な行動を選択する元の生活に何事もなかったかのように戻っていきます。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「こころの復興」で大切なこと

震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

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