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香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第16回】 2011年8月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

人が抱える悲しみや苦しみを
表に現れた態度だけで決めつけるのは危険

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感情的になることは
恥ずかしいことではなくなった

 今年7月29日の衆議院経済産業委員会。

 経済産業大臣の海江田万里さんが、質問に立った自民党議員に詰め寄られました。

 「いつ辞めるかということは明言されないのですか? 大臣の価値を本当に落としていますよ」

 海江田さんは「私の価値はどうでもいいんですよ」と答弁しました。ただ、そのときの海江田さんは、国会の場でありながら顔をゆがめ、涙声になっていました。

 かつて、人前で泣く男は「男のくせに」と揶揄され、大人の男として不適格という烙印が押されたものです。しかし、現代は「涙ながらに訴えた」ということが美談として語られるようになっています。海江田さんがどう捉えられていたかわかりませんが、人前で涙を見せる男の人を「人間味がある人」「心根が優しい人」と肯定的に捉える風潮が広がっているように思います。

 これまでは、どんなことにもすぐに感情的に反応し、感情を制御できない人は「ボーダーライン・パーソナリティー(境界性人格障害)」など心の問題と見られてきました。自分にとってマイナスの経験が起こったときには、感情に任せるのではなく、じっくりと考えてそれをこころの中で捉え直し、知性化することがよしとされてきたのです。

 最近、世の中の人の多くはストレートに感情に訴えかけられるものを求めているように感じています。感覚的、感情的になることは恥ずかしいことではなく、人間として素直なことだと考えられています。

 そうなると、強い感情がこころに浮かんだときに、それを自分の中でワンクッション置くことによって鎮めるということができなくなってしまいます。感情を抑圧し過ぎるのはよくありませんが、脳の情緒を司る部分(扁桃核と呼ばれる部分など)が発火しやすくなっていると、脳全体にその感情が伝播し、興奮状態に陥ってしまうことにもなりかねません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「こころの復興」で大切なこと

震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

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