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データ・ドリブン・マーケティング
【第3回】 2017年4月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
マーク・ジェフリー,佐藤純,矢倉純之介,内田彩香

データ・ドリブン・マーケティングの
最低限知っておきたい15の指標

昨年末にヤフーの宮坂社長が「これからはデータ・ドリブン企業と呼ばれたい」と発言して、一気に日本でも認知が広がった感のある「データ・ドリブン・マーケティング」。数回にわたってそのエッセンスを紹介する『データ・ドリブン・マーケティング――最低限知っておくべき15の指標』は、世界最強のマーケティング企業アマゾンのジェフ・ベゾス氏の愛読書であり、アメリカ・マーケティング協会が選出する最優秀マーケティング・ベストブック(2011)の待望の邦訳である。

15の重要なマーケティング指標

 2003年に、私がマイクロソフトで初めて幹部研修を請け負った際、何人かの参加者から、マーケティング投資収益率(ROMI)の算出にはキラーアプリ(ソフトウェア)が必要ではないか、という感想を聞かされた。しかし、私に言わせればマイクロソフト自身が提供しているエクセルこそ非常に強力なツールであり、これこそがキラーアプリだ。

 本書で取り扱うマーケティング効果測定や、データ・ドリブン・マーケティング向けの指標およびフレームワークは、比較的シンプルで効果的なものに絞り込んでおり、エクセルは出発点として最高のツールになる。もちろん、マーケティングと売上高を結びつけるもっと高度なツールやテクニックはたくさん存在するし、役にも立つ。たとえば、多くの消費財メーカーは、回帰分析を使ってマーケティング費用と売上高の相関を確認している。

 一方で、このような高度な分析を正しく行うためには、大規模かつクリーンなデータ(余分な情報が含まれず、分析しやすいように整えられたデータ)が必要となるが、多くの企業にとって、そのような大規模かつクリーンなデータを入手しにくいのも事実だ。

 このため本書では、マーケティング効果測定のひとつのフレームワーク、成果向上につながる厳選された指標、比較的明解で企業規模にかかわらず実践しやすい分析手法の3つに集中して説明する(念のため書き添えておくと、回帰分析は間違いなく有用な分析手法だ。本書第9章では、メレディス・パブリッシング社が回帰分析を使って顧客の次の購買商品を予測している事例を取り上げると同時に、顧客維持のためにアースリンク社が行う決定木分析のような、他のデータマイニング手法と回帰分析との比較も行っている)。

 最初に使うツールとして、エクセルは非常に有用であり、本書では取り上げる事例の数値データをエクセルのテンプレートファイルとしてすべて公開しダウンロード可能としている(英語のみ)。実際に日々のデータ・ドリブン・マーケティング業務を進めていく上では、恐らく自動化したいプロセスが出てきたり、特に大量の顧客数を抱える企業の場合は、データベースや洗練された分析ツール等、しっかりしたマーケティング・ITインフラが必要になることもあるだろう。この道のりに着手することを、次章「何から始めるべきか?」で取り上げ、そして必要なITインフラについては、第10章で詳しく解説する。

 私としては、数を絞りながらも、マーケティングが生む活動の成果の大半を網羅できる、厳選された指標に集中することが大切だと考えている。私が最も重視する15のマーケティング指標は以下の通りだ。

(1)ブランド認知率
(2)試乗(お試し)
(3)解約(離反)率
(4)顧客満足度(CSAT: Customer Satisfaction)
(5)オファー応諾率
(6)利益
(7)正味現在価値(NPV: Net Present Value)
(8)内部収益率(IRR: Internal Rate of Return)
(9)投資回収期間
(10)顧客生涯価値(CLTV: Customer Lifetime Value)
(11)クリック単価(CPC: Cost per Click)
(12)トランザクションコンバージョン率(TCR: Transaction Conversion Rate)
(13)広告費用対効果(ROAS: Return on Ad Dollars Spent)
(14)直帰率
(15)口コミ増幅係数(WOM: Word of Mouth、ソーシャルメディア・リーチ)

 繰り返しになるが、馴染みのない指標があっても心配することはない。第3章から第7章で、すべての指標について事例を通じて詳しく解説する。

 (1)~(10)の指標は、いわゆる伝統的なマーケティング指標である。(1)~(5)の重要な非財務系指標については、第3章と第4章で解説する。これらの指標は、ブランディング、顧客ロイヤルティ向上、競合比較購買マーケティング、販促キャンペーンといった活動の効果を測るために使用される。(6)~(9)の指標は、すべてのマーケティング担当者が理解すべき重要な財務指標だ。投資収益率(ROI: Return on Investment)が入っていない理由については、第5章で解説する。伝統的指標の締めくくりは(10)の顧客生涯価値(CLTV)で、顧客価値重視の意思決定に際して最も重視される財務指標となっている。第6章ではこの重要指標を解説する。

 「広告費の半分が無駄になっているのはわかっている。問題は、どの半分が無駄かがわからないことだ」。ジョン・ワナメーカーによるこの有名な言葉が話されたのは、100年以上前だ。最近、ある企業のCMOは、「広告費の半分が無駄になっているのはわかっている。今ではどの半分が無駄かもわかる。テレビ広告だ」と私に聞かせてくれた。彼のコメントは、マーケティングにおける新しい媒体(インターネットやモバイル)の台頭と、それらの媒体では、マーケティング活動のトラッキングがかつてないほど容易であることを反映している。

 最後の5つ、(11)~(15)の指標は、私が「新世代マーケティング指標」と呼んでいるものだ。サーチエンジン・マーケティングの効果は、(11)~(13)の指標で評価される。(14)の指標、直帰率は、ウェブサイトの出来の良さを測る重要指標で、最先端のソーシャルメディア・マーケティングは(15)の指標、口コミ増幅係数でカバーする。

『データ・ドリブン・マーケティング――最低限知っておくべき15の指標』より

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マーク・ジェフリー Mark Jeffery

ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院 非常勤教授。同校のテクノロジー&イノベーション研究センターのテクノロジー・イニシアティブ・ディレクター。エグゼクティブMBAコースで「戦略的データ・ドリブン・マーケティング」の講座を担当、複数のエグゼクティブ・プログラムを監督する立場にある。フォーチュン1000社のうち252社の戦略的マーケティング・マネジメントを調査するなど、その実証的な手腕で評価される。マイクロソフト、インテル、デュポンをはじめとする著名企業のコンサルティングにも携わっている。Agile Insights LLCのマネージング・パーナーを務める。

佐藤純

デジタル時代のブティック・コンサルティング・ファーム、ブースト・コンサルティング合同会社 代表。ウェブ/データ解析コンサルティング・ファーム、株式会社プリンシプル 顧問。コンサルティング、スタートアップ投資、自社事業の3足のわらじ。東京大学経済学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校ファイナンスディプロマ(最優秀)取得、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院戦略的データ・ドリブン・マーケティング・エグゼクティブコース修了。ボストンコンサルティンググループにて経営コンサルタント(2000~2002年)。新生銀行にてインターネットチャネルの立ち上げ、収益チャネルへの成長に貢献(2002~2006年)。本書の全体監修を担当。

矢倉純之介

東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院経営学修士(MBA)。大手飲料メーカーにてマーケティング、事業企画、クロスボーダーM&A業務を経験。現在は所属事業部門が本部を置くアメリカで経営企画業務に従事。本書の冒頭から第6章までの翻訳を担当。

内田彩香

和光大学人文学部卒業。編集プロダクションでの勤務の後、オーストラリアRMIT大学で通訳ディプロマ、翻訳学の修士課程を修了。以来メルボルンを拠点にフリーランスの翻訳者として活動。本書で第7章から第11章まで翻訳を担当。


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