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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国で日本留学・就職経験は「マイナス資産」?

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第56回】 2011年6月9日
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 先日、北京から送られてきたあるメールマガジンを読んで、驚きを覚えた。メールマガジンの発行者は、以前日本の通信社に勤めていた中国人記者Wさんで、現在は中国に帰って北京にある政府系の日本語メディアで働いている。メルマガの記事は、日本で長年留学と生活した体験をもつ彼ならではの視点があり、読み応えがある。

 海外での留学・就職を経て、中国に帰った人は中国で「海帰」と呼ばれる。「海外からの帰国者」という言葉の略である。一時、その「海帰」たちを「海亀派」と呼ぶ傾向もあった。中国語では、「海帰」と「海亀」との発音が同じなため、言葉遊びでそうなったのである。

 一方、中国国内育ちの人材は「土豆派」と呼ばれていた。「土豆」とはジャガイモを指す語である。十年ほど前の言語現象であるが、泥臭い「土豆派」という呼び方からも、海外での生活体験や就職体験が必要以上に評価されていた当時の中国の社会事情が読みとれる。

 「海帰」した中国人が多数いる今は、「海帰」と言っても、当時ほどはちやほやされなくなり、人物と実力次第の評価になりつつある。いつの間にか、海外帰りの人材と中国国内育ちの人材を区別して呼ぶ「海帰派」と「土豆派」という表現は消えた。今は海外帰りの人間を指す「海帰」だけまだ使われている。場合によっては、その呼び方は、ややバタ臭く、中国の事情に疎いというマイナスの響きさえもっている。

 とは言っても、海外での生活体験や就職体験をもつことは、就職難の中国ではやはり大きなプラス材料である。Wさんの場合も同じだと思う。しかも、日本に長年暮らしてきたその経験が、彼の記事を味のあるものにしていると私は評価している。

 ところが、今回のメルマガは、なんと日本での生活経験を「マイナス財産」と主張しているものだった。

 たとえば、中国に帰ったニュー「海帰」のWさんに対し、先輩「海帰」で10年前に北京に戻った早稲田大学大学院卒の中国人弁護士Nさんは、「中国に戻ったならなるべく日本とかかわらないほうがいいですよ」と忠告したという。

 17歳から東京で青春を送り、10年間の日本滞在で身振りや話し方にも日本生活の名残を強く感じさせるNさんを見て、Wさんは思わずなぜですか、と疑問をぶつけた。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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