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香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第9回】 2011年6月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

震災で浮き彫りになった、
日本人が求めた「豊かな暮らし」の脆さ

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被災地では選択肢が奪われている
こだわりを主張すると「贅沢だ」の声が

 東日本大震災は、被災地から「選択の自由」を奪いました。

 被災地の子どもたちに文房具を贈るとき、とりあえず鉛筆と消しゴムを渡しておけばいいと考えがちです。小学生はまだしも、中学生や高校生は鉛筆を使いません。

 支給されるおにぎりも、震災前までは海苔が「直巻きでしっとり」「別包装でパリパリ」という違いにこだわっていたのに、避難所ではその選択肢はありません。

 特に象徴的だったのが、女性の下着、ブラジャーの問題です。

 男性は理解しにくいでしょうが、一口にブラジャーと言っても、カップとサイズの組み合わせが複雑で、自分の体に合わないとしっくりきません。しかも女性は「こういうタイプのものがいい」というこだわりを持って選んでいます。何も高いものでなければいけないということではなく、色やデザイン、あるいは素材に対するこだわりなのです。

 全国から寄せられる支援物資のおかげで、被災地には豊富な衣類があります。

 女性用の下着も、物量だけは確保できています。しかし、そこには最もスタンダードなタイプのブラジャーしかありません。被災地の女性は、バリエーションもサイズも少ないことに不満を言いたくても、なかなか言い出すことができないといいます。支援者からの批判を受けてしまうからです。

 「贅沢を言うな」「あるだけましじゃないか」「被災者なんだから、お洒落なんかしなくていい」「嫌ならタオルでも巻いておけ」

 支援に善意があるだけに、被災地ではとてもやっかいな問題になっています。

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    香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

    1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


    香山リカの「こころの復興」で大切なこと

    震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

    「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

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