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チェルノブイリと福島のセシウム汚染
住民避難への対処法はどうだったのか
――旧ソ連政府は現在の日本政府より住民の安全サイドに立っていた

福島原発震災 チェルノブイリの教訓(9)

坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]
2011年6月16日
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 いつのまにか福島原発の4つの事故炉から放出された放射性物質の総量が倍増していた。誤差を考えるとチェルノブイリの約14%から20%である。関東平野まで広範囲に汚染したことは間違いないが、もっとも心配なのは原発から80キロ圏だ。チェルノブイリの14-20%とはいえ、周辺の汚染濃度はチェルノブイリ並みであることが検証されている。

 本題に入る前に、前回「足柄のお茶はなぜ汚染されたのか」について追記する。「お茶は葉ではなく、根からセシウムを吸い上げた」、と筆者の推測を書いたが、農水省が「根からではなく、古い葉に吸着したセシウムが幹に流れて新しい葉にいたった」(筆者要約)という見解を6月2日に発表したので紹介しよう。


お茶の放射性セシウムの実態に関する調査結果について 6月2日 農林水産省

1 調査の趣旨
生葉(新芽)・荒茶・飲用茶の各段階における放射性セシウムの関係及び茶樹の汚染メカニズムを考察するため、茶葉及び土壌を採取し分析。

2 調査結果
(1)生葉、荒茶、飲料茶における放射性セシウム濃度
   [1] 生葉から荒茶に加工される過程で重量は約1/5に変化。
    放射性セシウム濃度は、水分の減少に応じて高くなっており、
    加工過程でセシウム自体はほとんど失われない。
   [2] 荒茶から熱水で抽出する段階で、飲用部分に抽出される
    放射性セシウムは、5~6割程度。
(2)茶樹の汚染メカニズム
   [1] 古葉に含まれる放射性セシウムは、生葉(新芽)と
    ほぼ同程度(乾物重量比ベース)。
   [2] 土壌中の放射性セシウム濃度は、畝間で概ね260
    ベクレル/キログラム以下、株元で概ね40ベクレル/キログラム
    以下と低く、土壌からの吸収は、あまり考えられない。
   [3] 調査茶園における茶の新芽は4月10日前後であり、
    大量の放射性物質が放出された時点では、茶の新芽は
    出ていない。
   [4] 文献によれば、セシウムは、植物の葉面から吸収され、
    植物体内を移動。また、お茶は、セシウムと類似する

    カリウムよく吸収。
   [5] 以上のことから、今回、生葉(新芽)で検出された放射性
    セシウムは、土壌中から吸収されたものではなく、古葉に付着
    したものが葉面から吸収され、新芽に移動したものと推定。


 ということだが、農水省も「推定」であり、実証はこれからである。いずれにせよ、お茶の場合は次の収穫(2番茶)の段階では大幅に放射性物質は減少しているはずである。

 福島原発のメルトダウン(炉心溶融)と爆発によって飛散した放射性物質の総量が訂正され、倍増した。当初、原子力安全・保安院は37万テラベクレル(1テラ=1兆)としていたが、この2倍に当たる放出量だったと先ごろ訂正された(以下、単位はわかりやすいように変えた)。

 2倍ということは74万テラベクレルだから、チェルノブイリ原発事故で放出された総量520万テラベクレルの14.2%である。またあとで増えそうな気もするが、誤差を考慮して当面、14-20%くらいと考えよう。

 本当は、核種別の放出量がわかればいいのだが、まだ公表されていない。核種別の量をインヴェントリー(目録)という。東電や経産省は把握しているはずである。

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坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

1954年生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集長などを経て現職。著書に『複雑系の選択』『めちゃくちゃわかるよ!経済学』(ダイヤモンド社)『浦安図書館を支える人びと』(日本図書館協会)など。


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