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ポスト3.11の論点 日本と日本人の選択肢

だれが最終的に二重ローンの損失を負うのか
問題の本質をぼやかした“まやかしの救済策”

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
【第21回】 2011年6月17日
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 「いま、二重ローン問題が深刻化している。やっとの思いで住宅を自立再建した人々の中で、不公平感と生活の厳しさと将来の不安を訴える人が急速にふえてきている。」これは阪神淡路大震災から5年後に、兵庫県震災復興研究センターが出版した『大震災いまだ終わらず』に、神戸商科大学の菊本義治教授(当時)が記した一節である。

 大震災で工場の建屋も設備も流されてしまった。にもかかわらず、設備を更新したときに地元の金融機関から借り入れたおカネが、まだ数千万円も残っている。事業を再開させたいが、既存のローンがあって、新たな借り入れが難しい。あるいは、新規のローンを借り入れたが、既存ローンと合わせて借入額が膨らみ、返済額が増えて経営が非常に苦しい。

 これがいわゆる「二重債務」「二重ローン」問題である。個人の住宅ローンについても、構図は同じだ。こうした二重ローン問題は、被災地の経済を復興させるためにも、人々の生活に安心をもたらすためにも、解決しなければならない最重要課題の一つである。

民主党、自民党の
二重ローン対策の中身

 震災から3ヵ月がたって、ようやく与党民主党を始め、各党の二重ローン対策がまとまってきた。その中身を簡単に見てみよう。

 まず民主党案である。同党の案では、最初にお金を借りている債務者を中小企業(事業性ローン)と個人(住宅ローン)に分ける。次に企業については「再生が可能」、「判断が困難」、「再生が困難」の三つに分類する。

 再生が可能と判断された企業については、企業再生支援機構や、官民出資で新設される中小企業再生ファンドが支援する。例えば、民間金融機関から、対象となる中小企業の債権を買い取り、出資に切り替える。借入金にくらべて出資であれば返済の義務がなく、利益が出ないうちは配当もしなくてよいから、返済負担は軽くなる。

 再生が困難と判断された場合は、私的整理ガイドラインのスキームなどを使って、債権者(金融機関)と債務者(借入人)の間で話し合い、債権放棄などの債務の整理を行う。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

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東日本を襲った未曽有の大震災そして原発事故。3月11日を境に、日本人の目の前に広がる世界は大きく変わってしまった。政治経済から企業経営、そして生き方まで、ポスト3.11の論点と選択肢を識者とともに考える。

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