「お客様は誰でも神様」は通用しない?
日本に及ばない中国飲食店のサービス
初めて中国を訪問した日本人が、まず違和感を覚えるのがレストランやショップにおける「サービスの悪さ」だろう。「お客様は誰であっても神様」という日本流の常識は、中国では通用しない。
極端に言えば「自分を儲けさせてくれる客以外はお客様ではない」と考える店員が多い中国では、得意客にでもならない限り日本人が当たり前だと考える「無料サービス」は期待できないのが現状だ。
この状況を逆に考えると、「顧客サービス」で世界のトップレベルを行く日系企業にとっては、チャンスとも言える。そのサービス力でローカルの競合プレイヤーと差別化することができれば、成長を続ける中国市場で勝負できるからだ。実際そう考えて、中国に進出する日系企業も多いが、そう簡単にはうまくいかないのが実情だ。
その一番の原因は、中国でサービスを提供する場合、その担い手が「中国人」にならざるを得ないことにある。子どもの頃から「お客様は神様です」と洗脳されて育った日本人とそうではない中国人とでは、サービス、ホスピタリティに関する常識がOSレベルで違う。
日系の靴屋が上海に進出したときに、日本同様に「跪(ひざまず)きながら接客する」スタイルを導入しようとしたところ、「客だからと言って、なぜ跪く(という屈辱的な態度までする)必要があるのか」と、自社の中国人店員から反発を受けたという話を聞いたこともある。
また、中国の労働市場の流動性も日系サービス業にとってはアゲインストとなる。せっかく苦労をして日本レベルのサービスを提供できる中国人スタッフを育てたと思ったら、競合に高い給料で引き抜かれてしまうからだ。
10年以上前から中国でホテル経営をされている日本人経営者の言葉を借りると、「うちはローカルの競合から、ホテルマンを育てる専門学校と言われている」という状況なのだ。