睡眠、美容、子育て、集中力、ダイエット、禁煙、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネス。これを日本で最も広めたベストセラー『最高の休息法』に「医師監修の特別音源CD」を付属した実践編が登場した。その名も『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』――。その一部をご紹介しよう。

脳の疲れは「過去と未来」からやってくる

前回は呼吸に注意を向けるマインドフルネス呼吸法の説明をさせていただきました。

頭を空っぽにしようとすると、「脳の疲労」には逆効果!?
http://diamond.jp/articles/-/128205

前回の説明を聞いて、「なぜ呼吸に注意を向けるのだろう?」という疑問を持った方も多いと思います。いかにも瞑想っぽくて、なんとなくイヤだなと感じた方もいるでしょう。その点について少しご説明しましょう。

マインドフルネスは、一種の注意力のトレーニングとしての側面を持っていますが、実際のところ、呼吸に本質があるわけではありません。では何をしようとしているのかというと、“いまここ”に意識を向けているわけです。

実際に瞑想をしてみたことがある方は思い出してみてください。目を瞑っているあいだ、どんな雑念が浮かんできましたか? おそらくそのほとんどが、過去に起きたことか、未来に起ころうとしていることに関係していたと思います。

脳の疲れは、過去や未来から生まれます。終わったことを気に病んでいたり、まだ起きてもいないことを不安に思っていたり、とにかく心が“いまここ”にない。この状態が慢性化すると心が疲弊していきます。うつの患者さんによく見られる反芻思考(過ぎたことなどを繰り返し何度も考えてしまう傾向)はその典型です。

人間の脳は放っておくと、とにかく過去や未来のことを考えようとする─これが雑念回路DMNの正体です。
あなたの頭はいつも過去と未来を行ったり来たりしていないでしょうか? 「過ぎ去った私」と「これから来るかもしれない私」のことばかりを考えていないでしょうか? 「いまここにいる私」のことを忘れてはいませんか?

「過去や未来から来るストレスから解放されることが、マインドフルネスの目的です」

これは、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にあるマインドフルネスの研究拠点MARC(Mindful Awareness Research Center)で教育ディレクターをしているダイアナ・ウィンストンの言葉です。

先のこと・あとのことに心を奪われた状態があたり前になると、人間は“いまここ”に意識を向ける方法を忘れてしまいます。決まった方向ばかりに関節を曲げていると、身体が固まって柔軟性が失われてくるのと同じです。

いつもと違う方向に少しだけ関節や筋肉を伸ばして身体を整えるストレッチのように、いつも過去・未来を向いている意識をあえて現在のほうに向けてみる。マインドフルネスは、疲れづらい心・ケガしづらい心をつくるための脳のストレッチだとも言えるでしょう。

しっかりと脳を休息させたかったら、まずは“いまここ”にいる状態を体得することです。マインドフルネス呼吸法は、そのためのスキルなのです。

また、マインドフルな脳の状態というのは、子どもの心に近いと言えるかもしれません。
小さな子どもにとっては、ありとあらゆるものが新鮮であり、“いまここ”にある目の前のことに並大抵ではない注意を向けています。何かをしながら別のことをくよくよと思い悩むことがありません。マインドフルネスは、はじめて世界に触れる子どもの心を取り戻すことでもあるわけです。