たった5日で効果が出たこともある

最後に、少しだけヒントになりそうなことを、いくつかつけ加えておきましょう。

まず、瞑想の際のちょっとしたコツとして、ラベリングという方法があります。方法というと大げさですが、呼吸に合わせて1から10までを数えるだけです。「吸って吐いて」を1単位としてカウントし、それぞれの呼吸に「1」「2」というふうにラベルを貼っていくわけです。あまり数が大きくなると、注意力がそちらに奪われてしまいますから、10まで数え終えたらまた1に戻ります。

「呼吸に注意を向けるだけだと、すぐに雑念が浮かんでしまって……」という人は、このラベリングがいちばんです。心をリラックスさせるだけでなく、集中力を高める効果があることもわかっています。

また、もしマインドフルネスをやるのなら、1日5分でも10分でもけっこうですから、毎日続けることをオススメします。できれば、時間帯や場所も固定しましょう。

いくら脳に可塑性があるといっても、脳を変化させるためには継続的な働きかけが欠かせません。すでに紹介したブルワーの実験でも、10年以上の瞑想経験があるベテランを被験者にしています*01。人間の脳は習慣が大好物ですから、同じ時間・同じ場所で毎日続けているほうが、効果はより出やすくなります。

ただ、「10年も続けるなんてムリ……」なんて諦めないでください。
じつは、たった5日間の瞑想で効果があったという研究もあるくらいですから、短期的な取り組みがまったく無意味というわけでもないのです*02。

まずは1週間を目安に続けてみるのがいいでしょう。続けられなくても、もちろん自分を責める必要はありません。「ノンジャッジメンタル=あるがまま」を貫いて、徹底的に自分本位で取り組んでください。

まずは、この直後に1分でもいいからやってみましょう。
すべてはそこからです。ひょっとしたらたった1分のその瞑想が、あなたの脳の未来を左右する、大きな分岐点になるかもしれませんよ。

*01) Brewer, Judson A., et al. (2011a) “Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity.” Proceedings of the National Academy of Sciences 108.50: 20254-20259.
*02 Tang, Yi-Yuan, et al. (2010) “Short-term meditation induces white matter changes in the anterior cingulate.” Proceedings of the National Academy of Sciences 107.35: 15649-15652.