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エコカー大戦争!

クルマに蓄えた電力を家庭やオフィスに回す?
電力不足の時こそ電気自動車の出番は本当か

桃田健史 [ジャーナリスト]
【第83回】 2011年6月28日
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 「この急速充電用の充電口にコネクターをつなぎ、逆潮流させる。(直流から交流への)変換器を車のすぐ隣に置いてそこに家庭用コンセントを設けるか、または変換器を住宅内に設置するかなど様々な可能性を検討中だ。こうした変換器はオプション設定商品として年末までには販売したい」。

 三菱自動車工業EVビジネス本部EV国内推進部プロモーショングループ主任の松村正博氏は、電気自動車「i-MiEV」を前にそう語る。

三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」の急速充電用の充電口。ここにコネクターをつなぎ、その先に直流→交流の変換器を置き、逆潮流させる。オプション設定商品とし、今年末までに発売を目指して現在開発中。

 ここでいう「逆潮流」とは、発電所→送電→変電という通常の電気の流れに対する「逆の流れ」を指す。電気自動車の分野では、スマートグリッドの概念のなかで用いられる言葉だ。分かりやすく言えば、電気自動車が走行用モーターを駆動するために搭載している蓄電池から電気を取り出し、電力系統に戻すことである。

 電気自動車・プラグインハイブリッド車・ハイブリッド車は「非常用電源」になる――。東日本大震災をきっかけに、そうした期待が高まっている。必然的に電動化車両とスマートグリッドとの連携技術の開発を加速させる必要性が指摘されるようになっている。

 このことは、本連載第82回で取り上げた「日本経済の新たな成長の実現を考える自動車戦略研究会/中間取りまとめ」でも重要課題の一つとして言及されている。「震災時のエネルギー問題を踏まえた次世代車等の新たなる役割」と銘打たれた第1章第1項には、1.5kw/AC100Vの電源を持つトヨタ「エスティマ・ハイブリッド」が被災地でパソコンや携帯電話の充電用として役立ったことなどが紹介されている。

 また、報告書は、経産省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」のなかで、電気自動車とプラグインハイブリッド車を活用したスマートグリッド構想の開発を急ぐと宣言している。自律分散型の電力発生拠点の太陽光発電や風力発電を補完し、将来の災害に対応するためだ。

 前回述べたとおり、この報告書は、国内自動車産業界の重鎮たちが作成に関わったいわば「次世代自動車戦略2011」だ。すなわち、ここに明記されたということは、日系自動車メーカー各社の経営陣が自社の開発部門に対して「早期に逆潮流技術を構築せよ」と指示したに等しいインパクトを持つ。

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桃田健史 [ジャーナリスト]

日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなど米国レースにレーサーとしても参戦。自動車雑誌に多数の連載を持つほか、「Automotive Technology」誌(日経BP社)でBRICs取材、日本テレビでレース中継番組の解説などを務める。1962年生まれ。著書「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」好評発売中


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