ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

近年、人々の消費行動に大きな変化の波が訪れている。モノやサービスをじっくり選び、長く所有するのではなく「ひとまずトライしてみる」という気軽さが消費スタイルに反映されているという。マーケティング研究者・久保田進彦氏が4つの視点から現代人の消費行動を紐解く。※本稿は、久保田進彦『リキッド消費とは何か』(新潮新書、新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

「~してみた」動画から
現代人の価値観を読み解く

 バーディーとエカート(1*)は、リキッド消費(2*)に関する学術的研究の課題として、次の7つの論点を示しています。

(1)消費者愛着と占有、(2)使用価値、(3)物質主義、(4)ブランド・リレーションシップとコミュニティ、(5)アイデンティティ、(6)プロサンプションとプロシューマー、(7)ビッグデータと自己の定量化と監視です。

 これらは研究者にとって非常に重要な論点ですが、本稿ではリキッド消費傾向が強くなると具体的にどのような消費行動が見られるかを、もう少し一般的な観点から整理してみます。

「軽く選ぶ消費」「いろいろ楽しむ消費」「ひと手間かけない消費」「持たざる消費」という4つの消費です。

 第1は、「軽く選ぶ消費」です。YouTubeに代表される動画サイトでは、「歌ってみた」「踊ってみた」など「~してみた」という表現がよく見られます。

(1*)…編集部注:イギリスの研究者フルーラ・バーディーとギアナ・エカート
(2*)…編集部注:バーディーとエカートが2017年に発表した論文「Liquid Consumption」で示した「短命性」「アクセスベース」「脱物質」という3要素を特徴とする消費行動