ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
オンリーワン差別化戦略
【第1回】 2017年5月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
ウィリアム C. テイラー ,北川知子

シルク・ド・ソレイユばりの大賑わい!
銀行なのに、顧客に愛される理由
凄腕エディターが取材しまくって見つけた、知られざる成功物語

1
nextpage

戦略の要諦は、差別化である。差別化とは、ライバルとの違いを出すことではなく、“圧倒的にズバ抜けて”、“顧客に一目置かれること”である。シリコンバレーでなくとも、そんな例はたくさんある。人手不足の清掃業界が大化け! さびれた町が駐車場で復活! 銀行なのに顧客に愛される! 米有名ビジネス誌の凄腕エディターが取材しまくって見つけたユニークな事例の一部を、『圧倒的な強さを築く オンリーワン差別化戦略』から無料公開する。

メトロバンク成功の秘訣は、
「斬新さ」ではない

イギリスを拠点に展開するメトロバンク。そこかしこに親しみやすく楽しめる工夫がある。https://www.metrobankonline.co.uk/

 ロンドンから北西約80キロ、オックスフォードとケンブリッジのほぼ中間に位置するミルトン・キーンズを訪れたのは、とある金曜日だった。オフィスビルやショッピングモール、集合住宅が並ぶ「ニュータウン」は、企業誘致のための経済戦略や都市計画の手本として1960年代に作られた。失業率は低く、安定した成長を維持しているが、おしゃれな街ではない。

 オークグローブ地区にもこれと言った特徴はない。私が訪れたときは、好奇心旺盛な人たちが歩道で騒いでいた。DJは、流行のダンス音楽に合わせて身体を揺する。高くなった側路を歩きながら誰とでもハイタッチを交わす道化に、子どもたちは大はしゃぎ。フェイスペイントをした人がいれば、ポップコーンやアイスクリームを手にした人もいる。中世風に胸に勲章をさげた市長、前回の選挙で市長に勝った保守党議員など政治家の顔も見える(かつてのライバルも仲良くやっているようだ)。誰より注目を集めたのは、12歳のヨークシャテリア「ダフィールド卿」だろう。通行人が目を留め、手を伸ばす。

 こんなに賑やかなのはなぜだろう。シルク・ドゥ・ソレイユのショーでも始まるのか。ハリウッド映画の公開日なのか。

 実はこの日は、メトロバンクの支店オープンを祝う、2日間の記念行事の初日だった。

 メトロバンクは、2010年7月にロンドン中央部のホルボーンで最初の店舗を開業。以後急成長を続け、ロンドンの繁華街(アールズ・コート、ケンジントン、シティ)や北東のケンブリッジ、南のブライトン、西のリーディングほか、イギリス全土で店舗を展開している。新しい支店はミルトン・キーンズでは2店目、イギリスでは27店目だ。

 そして現在、2020年までに200店舗の開設、100万人の顧客との契約成立、従業員5000人の雇用、400億ドルの預金獲得を目指すという大胆な計画を推進中だ。世界の著名投資家から14億ドル以上を集め、イギリスで最も活気ある金融サービスブランドを築いている。

 新しくオープンした支店も、他の支店同様、明るく賑やかで遊び心にあふれている。これまでの陰気なイギリスの銀行と比べると、まるでアップルストアのようだ。ガラス張りの店舗に入ると、赤と黒を基調としたインテリアや高い天井、銀の支柱が目に入る。ロビーやATMのスクリーンにはスローガンが表示されている。「ついに愛される銀行が登場! 子どもたちは大はしゃぎ。愛犬も歓迎。ばかげた規則は一切なし」。

 鮮やかな色の硬貨計数機「マジックマネー・マシン」の画面には、メトロバンクのMをかたどった「メトロマン」が浮かぶ。女性スタッフは赤いドレスに黒のブレザーか黒いドレスに赤のブレザー、男性スタッフは白いシャツに赤いネクタイのスーツ姿だ。ヨークシャテリアのダフィールド卿まで、メトロバンクのスカーフを首に巻いている。

 同社の店舗空間から顧客体験、社風に至るまで最終責任を負うシャーリー・ヒル(共同創業者バーノン・ヒルの妻)は「私たちは、新規出店のためだけにここに来たわけではありません」と語る。「世界最高の銀行を作るためにイギリスにやって来ました。ほかの銀行よりもましな銀行を作るだけなら簡単ですが、それが目的ではありません」。

 だとしたら、世界最高の銀行になるためには何が必要なのだろう

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
  • ダイヤモンド・オンライン 関連記事
    借りたら返すな!

    借りたら返すな!

    大久保 圭太 著

    定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2017年7月

    <内容紹介>
    会社がつぶれないためには、会社に「お金」があればいい。つぶれない会社に変わるための「銀行からの調達力を上げる7つのステップ」や「儲ける会社がやっている6つのこと」、「つぶれそうな会社でも、なんとかる方法」などを紹介。晴れの日に傘を借りまくり、雨になったら返さなければいい、最強の財務戦略を指南する。

    本を購入する
    著者セミナー・予定

    (POSデータ調べ、8/13~8/19)



    ウィリアム C. テイラー(William C. Taylor)

    米国の著名ビジネス誌『ファストカンパニー』共同創刊者。元『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)エディター。HBRのウェブサイト「HBR.org」に連載を持ち、『ニューヨーク・タイムズ』『ガーディアンズ』などにも寄稿多数。既刊邦訳に『マーベリック・カンパニー 常識の壁を打ち破った超優良企業』(日本経済新聞出版社)がある。プリンストン大学卒、MITスローンスクール修了。米マサチューセッツ州ウェルズリー在住。

    北川知子(きたがわ・ともこ)

    翻訳家。訳書にムン『ビジネスで一番、大切なこと』、オニール『次なる経済大国』、カラベル『経済指標のウソ』(ダイヤモンド社)、モリス『人類5万年 文明の興亡』(筑摩書房)、クレピネヴィッチ『帝国の参謀』(日経BP社)など。


    オンリーワン差別化戦略

    戦略の要諦は、差別化である。差別化とは、ライバルとの違いを出すことではなく、
    “圧倒的にズバ抜けて”、“顧客に一目置かれること”だ。飲食、金融、病院、製
    造、運輸、不動産……すぐに真似される 競争の激しい業界、イノベーションが出尽
    くした 超成熟産業など、逆境下で“ズバ抜けた”企業の共通項を提示する。

    「オンリーワン差別化戦略」

    ⇒バックナンバー一覧