配属してまもなく
突如、異動希望の申し出!

「社長、私はB課長とソリが合いません。他の部署に異動したいのですが……」

 Aから突然の申し出に、C社長は驚きを隠せなかった。今までそんな素振りは見せたことがないし、B課長からも報告は受けていない。C社長は早速、B課長に事情を聞いてみた。

「昨日、Aに仕事の進め方について注意しました。かなり細かいところまで指摘したので、ショックだったのかもしれませんね。それに彼に注意した時の口調も少々きつかったかな……」

 B課長はAのことを気に留める様子でもなく、苦笑いで答えた。確かにB課長は仕事に対して厳しいが、仕事への指示等はいつも的確で、社内だけでなく顧客からも信頼は厚い。それに普段からAにだけ特別厳しい態度で接していたわけではない。いつもは温厚で軽いジョークも飛ばすくらいなのだ。

 しかし、事は簡単には収まらなかった。翌日、始業時間になってもAが出社して来なかったのである。心配になったB課長はAに電話してみたり、LINEに連絡を入れてみたが応答がない。会社から車で5分ほどの場所にあるAの自宅へ行ってみたが、留守なのか出てくることはなかった。

 次の日も、また次の日もAは無断欠勤を繰り返した。そして、1週間が過ぎたある日、社長が外出先から戻ると、社員から「社長、Aが出社しています。社長に話があるそうです」と声を掛けられた。

 社長室に戻ると、Aが入ってきた。

「A君、今までどうしていたんだ?いくら連絡しても返答がないし……。皆心配していたんだよ」

 Aはその問いかけに対して返答はせずに、いきなり病院の診断書を提出してきた。社長がその内容を確認すると「うつ症状により3ヵ月間の療養を要す」と記されている。Aは社長に訴えた。

「私は今まで一生懸命仕事に打ち込んでいたのに、それを認めてくれるどころが、B課長から細かいところまで揚げ足を取るように注意され、大声で罵倒されました。恐怖と悔しさでその夜は眠れませんでした。翌日から出社しようとするとあの場面が思い出されて足がすくんでしまったのです。毎日眠れないし、頭は痛いし、食欲もありません。とにかくB課長とはもう会いたくありません」

 C社長は思わぬAの訴えに動揺した。しかし、病院からの診断書がある以上、休職させないわけにはいかない。Aには業務の引継ぎのため3日間出勤するように頼んだが、断られてしまい、翌日からまた出社しなくなった。

「1回叱責されたぐらいで休職だなんて、近頃の若者は何を考えているんだ!?」

 学生時代、常にリーダーであったAは、これまで他人から自分の言動に対して注意や指摘を受けたことがない、「お山の大将」的存在だったのである。今回B課長に仕事の進め方等について注意されたAは、これまでの「自分はリーダーなんだ」というプライドがへし折られ、一気に仕事に対する自信と意欲をなくし、メンタルヘルス不調になってしまったのだ。