企業も大学も頭を悩ませる
日本の若者は「ヘタレ化」しているのか?

 筆者の住むマレーシアでは、年度始めは1月なので、4月でも人々の暮らしに変わりはない。だが、日本では春の訪れとともに新年度を迎え、新しい環境で心機一転かんばっている人も多いだろう。筆者のもとにも、職場が変わったという挨拶メールがいくつも届いている。

 その一方で、「新入社員が3日でやめた」「やっぱりこんなブラックなところには勤められない、と1週間で辞めていった」「初日の出勤時間前に電話があって『やっぱりしんどいので辞めます』と言われた」といったニュースがいくつも出ている。今どきのゆとり社員はこらえ性がない、などというコメントもよく見る。

高度成長期のモーレツ社員たちから見れば、イマドキの若者はヘタレに見えるのだが … 
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 事実、そういった傾向は強くなっていて、それは10年以上前から始まっている。大学新入生や新入社員の中には、いわゆる5月病と言われる状態にハマってしまう者がいる。新しい環境に慣れてきた頃に、当初の興奮が去り、倦怠感や無気力に襲われて、登校・出社する気力がなくなってくる現象だ。

 10年以上前、筆者の勤めていた京都大学の教務担当の先生が、当時「前は5月病ってゆうておったけど、今は4月半ば病になってきとる(笑)。授業1回か2回やったら、もう学生は授業に来んようになって、教室スカスカでタイヘンや」と話していた。

 ニュースに載るような極端なケースは別としても、全体としては、実際に雇用期間は短期化しているし、大学でも退学が最も多い季節は春だ。

 その意味では、もう10年以上前から、日本の若者は「ヘタレ」化しているように見える。だがそれは本当だろうか。

 1970年代の日本のビジネスマンの是は、「努力・根性・忍耐」だった。電通の社長だった吉田秀雄氏が作った「鬼十則」はその典型だ。電通マンの行動規範といわれるそれが作られたのは、51年、終戦直後の大好景気時代幕開けのときだ。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事は己れを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてそれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。