その後、病院で治療を受けるようになったAから、「出社できません」と報告を受けている。営業課から他部署への異動も不可能ではないが、中小規模の会社であるがゆえに、B課長と顔を合わせずに済ますのは困難である。

「いい人材だと思って採用したが、失敗だったのか?人は見かけと履歴書だけでは判断できないものだな……(ハーッ)」とC社長の悩みとため息は、深くなるばかりであった。

Aの休職中、社員の業務過多で
退職希望続出の事態に!

 あれから半年が経過した。しかし、Aが復職する様子はなかった。この頃、甲社では取引先との大口契約が次々と決まり、ますます業務過多になっていった。営業課では、Aの業務を他の社員が肩代わりして行っていたが、それもすでに限界に達している。C社長としては自分が採用した手前もあり、Aの復職を待っていたかったが、他の社員たちが納得しなかった。

「Aがいつ復職するかわからないし、もし復職したとしても、もうAと仕事は一緒にできません。クビにして新しい社員を入れてください。そうしなければ私が退職します。こんな忙しい状態、もうやっていられません」と営業課の若手リーダー格であるEは、辞表を出すと言わんばかりに訴えた。実績のあるEに今退職されては非常に困る。しかもEだけではない。Aの扱いに不満を抱いた数人の社員からも退職希望が出されていたのだ。まさに社内、特に営業課の雰囲気は最悪だった。

 困り果てたC社長はAに電話をかけ、「具合が良くなったら早く仕事に復帰してほしい」旨を伝えたところ、「私はB課長だけではなく、もう会社の皆さんとも会いたくありません。どうせ僕の悪口を言いたい放題しているんでしょ?同期から聞きましたよ。ヒドイですよね。私は一生懸命仕事をしていたのに……。会社が原因で病気になったんだから訴えてやりますよ」と拒否されてしまった。

休職が長引くAの問題や他の社員の不満に
どのような対処・対策を講じたか?

 さて、その後、C社長はどう対処しただろうか。C社長はD社労士からアドバイスされた前述の(1)~(4)までの対策を実行してとりあえず急場はしのいだが、Aの休職が長引いている関係で新たな問題を抱えてしまった。そこで改めてD社労士に相談した後、以下のような対処・対策を行った。

(1)社員の補充問題
 早急に営業課へ社員を補充する。長時間労働は労働基準法違反にあたるので気をつける。

(2)Aの処遇問題
 Aの処遇については冷静に対処する必要がある。なぜならAは社内での評判を同期から聞いてパニック状態になっている可能性があるからだ。

(3)新入社員対象の研修見直し
 特に若年層に多い「新型うつ」対策としてセルフケア研修を取り入れる。また、仕事の指示を受ける際の心構え、社内でのコミュニケーションの取り方等の研修期間を設ける。

(4)管理職対象のハラスメント研修の実施
 仕事の指示の出し方について、パワーハラスメントになるかどうか判断に迷うところがあるため、課長以上の管理職を対象に、ハラスメントに関する研修を実施する。