4月に発生した大規模な個人情報流出事件や、テレビを筆頭とするエレクトロニクス事業の不振によって、繰延税金資産に対する評価性引当金3623億円を計上させられたソニー。そのソニー経営陣が、3期連続赤字の“免罪符”のように繰り返すフレーズ「営業利益の大幅改善」には、大きな“からくり”が隠れている。

東京・品川にあるホテルで開催されたソニー株主総会。株価は低迷し、米アップルを凌駕する商品は出なくとも、ソニーを愛する株主たちで会場はにぎわった

「トップは交代し、新たな経営陣となって、全世界にソニー再生を示すべきではないか」

 6月28日、過去最高となる8360人の株主が詰めかけたソニーの株主総会。国際的なハッカー集団「アノニマス」とのトラブルに巻き込まれ、4月に個人情報流出事件が起きてから、株価は2000円前後と低空飛行を続けたままだ。株主からハワード・ストリンガー会長兼社長CEOに対して放たれた最初の質問が、この引責辞任を求める声だった。

 これに対しストリンガー氏は、情報流出については謝罪したものの、株価の低迷は震災の影響が大きいとして引責辞任への回答は避けた。

 さらに「エレクトロニクス事業の業績はいつ改善するのか」「いつまで米アップルの後塵を拝するのか」「ウォークマンのような魅力的な商品が出てこない」など、株主からは本業について厳しい質問が相次いだ。というのも2010年度は、ソニー本社と国内事業が3期連続の赤字となり、さらに数年は改善が見込めないものとして、監査法人から、日本における税務について繰延税金資産に対する評価性引当金3623億円の計上を迫られ、最終損益は2596億円の赤字となったためだ。

 それに対してソニー経営陣は「営業利益は、前年の6倍を超えるまでに改善した」と繰り返し説明し、今後の業績に対する不安の否定に終始した。

 が、しかしである。営業利益は本当に回復しているのか。じつはそうとは言い切れない。以下に、その“からくり”を示そう。