プレゼンテーションは説得を目指すもの
すべてのプレゼンテーションが、説得を直接、目指すとは限らないだろう。単なる「報告会」であったり、「研究成果の発表」だったり、新製品の「紹介を中心とした説明会」もあったりで、「プレゼンテーション」の名のもとに、報告・説明のみが行われることもある。
とはいえ、開発した新製品は、当然売り込みをしなくてはならない。報告会、説明会といっても、そのあとには、説得を目的とした本来のプレゼンテーションが控えているのである。
結局のところ、
「すべてのプレゼンテーションは、説得を目指す」
のであり、説得から逃げ出すことはできない。ところが、説得は苦手という人が、意外に多いのも事実である。なぜだろう。
その理由は、第1に、人を説得するのは容易ではないからである。
提案する以上、相手にYESと言ってもらい、自らの提案が実行されることを望まない人はいないだろう。だから、
〈提案内容がすぐれているんだから、きっとうまくいくだろう〉
などと、希望的な観測をしてしまう。現実はそのように甘くない。YESよりNOと言われることが多い。NOと言われると、〈まさか〉〈どうして〉と、ショックを受け、そのまま引き下がる。
結果として、「説得は苦手です」となり、「技術者で口ベタだから」と、安易な結論にすがりつく。原因は口ベタでもなんでもない。相手は自分の思いどおりになるとの、認識の甘さにある。
第2は、うまくいかなかった結果を、相手のせいにしてしまうためだ。
相手がわからないのは、よさをわからせられなかった自分に問題がある、と考えなければいけない。なぜわかってもらえなかったのか。原因を把握して、次のプレゼンテーションに反映させることで、失敗が生きるのだ。失敗を相手のせいにするから、苦手意識に悩まされるのである。
説得とは、相手が自らその気になるように働きかけること、である。だが、相手は簡単にその気になってくれない。だからこそ、説得の心得や方法論が必要になるのである。