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飲食店を救う「ITサービス」ガイド
【第7回】 2017年6月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
中村 仁

飲食店の月次決算の時間を
「1ヵ月」から「5日」に短縮したしくみ
会計ソフト「MFクラウド会計」・後篇

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飲食店の予約/顧客台帳サービスとしてNo.1のシェアを誇る株式会社トレタの代表・中村仁氏に、飲食店向けのお勧めのITサービスを独断で選出し、解説してもらう連載。
クラウド会計の概要を説明した前篇に続き、今回は、まだ売上や経費を手入力して苦労していたり、税理士に任せきりにしていて不安な飲食店の経営者が、思わず「もっと早く教えてくれよ!」と叫びたくなる事例を紹介しましょう。(構成:谷山宏典 写真:疋田千里)

毎月末の決算のために1週間、
事務所にカンヅメ

 東京神楽坂の路地裏、花街の風情を感じる「芸者小道」の一画にある懐石料亭「神楽坂前田」をはじめ、都内に9つの飲食店を展開しているKAGAYA&Melissaグループ。前田瑞樹さんは同グループの特別顧問として、すべての店舗の財務も担っています。

 加賀屋は大正元年創業の老舗で、もとは食品の小売業を営んでいました。飲食店をはじめたのは10年ほど前からと会社の歴史に比べるとまだ日も浅いのですが、現在は小売でなく外食をメインにしています。

 これまでの連載では店舗単位で概要を見てきましたが、今回は会計に関する話なので、グループ全体としての概要を以下にまとめます。

店舗数……東京都内に5拠点、9店舗
業態……日本料理、鉄板焼、イタリアン、フレンチ、シャンパンバーなど
客単価……1~2万円の高級店が中心
売上……年商およそ6億8000万円
従業員……社員約40名、アルバイト約20名

 外食に進出して8年で9店舗は、業態を考えると出店スピードとしては速いほうだと思います。とはいえ、当初から多店舗展開を目指していたわけではなく、従業員を採用し、彼らが育っていくなかで「活躍する場を作ってあげたい」という思いから、店を増やしていったそうです。

KAGAYA&Melissaグループの一店舗「神楽坂 前田」


 店舗数が増えていったことで、バックオフィスの業務は徐々に煩雑になっていきました。そこで「少しでも効率化できないか」と、前田さんは社内のさまざまな業務のIT化に取り組むようになったのです。前田さん自身のITリテラシーの高さもあり、当時は、エクセルやアクセスを使って自作で業務システムを構築していました。

 最初に手をつけたのは、従業員の勤怠管理のためのタイムカード。そして、その次が会計でした。

前田 「会計業務は、もとは社長である父がほとんどやっていたのですが、飲食店の経営をするようになって2~3年目ぐらい、店舗数が増えはじめたころに私が引き継ぎました。いざやってみると、伝票の集計や社員の給与計算など手間のかかることが多かったので、システマチックに処理できるようにITを使うことにしたのです」

 父親の代からずっと店を見てくれている顧問税理士はいましたが、会計処理を丸投げすることなく、伝票の集計や社員の給与計算をわざわざ自分でやっていたのは、「数字の勉強をしたかったから」だといいます。

前田  「飲食店の経営が数字的にどのように組み立てられているのか、ちゃんと知っておくことは、これからお店をやっていくうえで必要なことかなと。それで会計処理もできるかぎり自分でやろうと考えたんです」

 お話をうかがってびっくりしたのは、前田さんがエクセルで自作した会計ソフトを使い、毎月決算を行なっていたことです。エクセルの自作システムに、店舗ごとの売上や諸経費を入力し、原価率や営業利益を算出。その後そのデータをCSVファイルに変換して会計ソフトに取り込んで、帳簿の作成をされていました。

 ただ、毎月のその決算作業には、かなりの労力がかかっていたようです。

前田 「月末のだいたい1週間ぐらいはオフィスにこもりっきりになり、徹夜することもたびたび。その間は、ほかの仕事の予定もプライベートの予定もいっさい入れず、『誰も来ないでくれ』と思っていました。とにかく大変で、『どうして毎月、月末が来るんだろう……』と意味不明なことを愚痴ったりも(笑)。毎月末は胃が痛くなる思いで、伝票とパソコンの画面にかじりついていましたね」

 そこまで大変な思いをして月次の決算をしていたのは、先述したように「数字の勉強」のためでもあったのですが、もう1つ前田さんの中には大きな動機がありました。
 それは従業員に毎月のインセンティブ、つまりボーナスを支払ってあげたいという思いからです。

前田 「飲食店の仕事は、かなりの重労働であるにもかかわらず、お給料は必ずしも高くはありません。となると、従業員たちが仕事を理解し達成し結果的に還元されるという好循環を感じられるような仕組みを考えなければいけません。『お金』というのはもっともわかりやすいインセンティブの形ですし、日々の仕事の成果として、お金できちっと還元してあげられれば、従業員たちのモチベーションの一助になるはずだと思ったんです」

 多店舗展開してきた理由とも共通しますが、この毎月の決算およびインセンティブの話からも、前田さんが従業員をとても大切にされていることが伝わってきます。

 いい店は、いい人材がいてこそ、作ることができます。高水準の料理やサービスをお客さんから求められる高級業態の店を経営しているならば、なおさらです。従業員を大切にする前田さんの考えは、実に真っ当なものと言えるでしょう。

 とはいえ、毎月の会計・決算業務で、前田さんにかなりの負担がかかっていたことも事実です。

前田 「何とか改善できないものか、という気持ちはずっとありました。でも、その方法がわからず、5~6年もの間、自作のシステムを使い続けていたのです」

 そんな状況が打開される転機となったのが、「MFクラウド会計」との出会いでした。

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中村 仁

(なかむら・ひとし)パナソニック、外資系広告代理店オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンを経て2000年に西麻布で飲食店を開業。立ち飲みブームのきっかけとなった「西麻布 壌」を皮切りに、とんかつ業態「豚組」、豚しゃぶ業態「豚組しゃぶ庵」などの繁盛店を世に送り出す一方、ツイッターを活用した集客で2010年に「外食ア ワード」を受賞。
2011年、料理写真を共有するアプリ「ミイル」をリリースしたのち、2013年に株式会社トレタを設立し現在に至る。
現在も「スクーリングパッド」をはじめ数々の飲食店向けセミナーの講師も務めている。
著書に『右向け左の経営術』『小さなお店のツイッター繁盛論』など。


飲食店を救う「ITサービス」ガイド

2015年は「飲食店IT化元年」と言われ、飲食店向けのITサービスが一斉にサービスを開始した年でした。
そして、その趨勢はすでに決まりつつあります。この連載では、そうした「飲食店を経営するうえで確実に利用したほうがよい」ITサービスを詳細に紹介していきます。
 

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