ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
THINK WILD あなたの成功を阻むすべての難問を解決する
【第2回】 2017年6月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
リンダ・ロッテンバーグ,江口泰子

インテルの事業計画書はたった◯◯文字!?
「今世紀最高のメンター」が明かす起業家の7割が計画を練らない理由

「考えすぎていないか?」
誰にも言えないアイデアを胸に抱えて悩む人たちと、これまでに4万人以上面談した「非営利ベンチャーキャピタル」エンデバーのCEOリンダ・ロッテンバーグによると、「最初の一歩」で悩む人に共通しているのは、すべてのこの「考えすぎ」が原因だという。そして、アイデアを実現するためには入念な計画書が必要、というMBAふうのアドバイスに、疑問を投げかける。
シリコンバレーから中東、アフリカ、そしてブラジルのスラム街まで、世界中で600社、1000人超の起業家を支援してきた彼女だからこそ言える、「本物のアドバイス」を、シェリル・サンドバーグも絶賛する著書『THINK WILD あなたの成功を阻むすべての難問を解決する』からご紹介しよう。

アイデアを実現するためには「入念な計画書」が必須だと考えていませんか?

計画を終わりにして、行動を起こそう

 2013年、わたしは朝の情報番組『トゥデイ』の、「アントレプレナーを支援する」というコーナーにゲスト出演した。もうひとりのゲストは、MBAを取得したインターネット起業家である。その女性は新規事業に乗り出すにあたって、75ページもの事業計画書を書き上げたという。そして、視聴者にも同じように入念な計画書をつくるようにアドバイスした。わたしは、危うく椅子から転げ落ちるところだった。わたしはこう言った。「それには、とても同意できませんね」

 いや、待ってほしい! とあなたは言うだろう。アイデアを実行するために段階的な計画書が必要なことは、誰でも知っている。クレイジーなアイデアが浮かんだら、計画書をつくったほうが、もっともらしく見えることは、誰にも異論がないはずだ。数字を書き込み、業界用語をちりばめ、予測を立ててグラフも掲載する。パワーポイントを使って、上司や友人や恋人が思わず唸るような資料をこしらえる。誰でもそうやって事業計画を立てるべきだ。

 だが、それについてわたしからひと言。その“誰でも”は間違っている。この段階で重要なのは計画を練ることではなく、行動を起こすことだからだ。

考えすぎていないか?
――南アフリカの連続起業家からの忠告

 ヴィニー・リンガムは、アパルトヘイト(人種差別・隔離)政策を取っていた、南アフリカ共和国の東ケープ州で生まれ育った。インド人居住地で少年時代を過ごし、映画『ウォール街』を観て、「大きくなったら自分も成功するんだ」と誓った。リンガムはいつしか、起業するという夢を抱くようになる。小学生のときにはステッカーを売り、大学時代にはロックバンドのマネジメントも行った。2003年、最初に勤めた会社を辞めて自宅も売り、婚約者とふたりの友人を説得して、4人でオンラインマーケティング会社を創業した。こうして、子どもの頃から夢見たアントレプレナーの人生を手に入れたのである。

 だが、リンガムは満足していなかった。新しい問題を見つけたからである。小さな企業のほとんどは資金不足か、ウェブサイトをこしらえるノウハウがない。そこで彼は、オンラインマーケティング会社を人に任せて、新しく「ヨラ」を創業した。ウェブサイトビルダーと無料レンタルサーバーを提供する会社である。するとすぐに、グーグルが進める大きなプロジェクトのために声がかかり、ヒューレット・パッカードからは、自社が販売するコンピュータにヨラの製品をプリインストールしたいと持ちかけられた。

 2009年、『ビジネスウィーク』誌は、ヨラを「知っておくべきスタートアップ50社」に選んだ。数年後、リンガムはまたも新しいスタートアップを立ち上げる。グーグル・ベンチャーズ(グーグルの独立投資部門)の支援を受けた、「Gyft(ギフト)」という、モバイルギフトのアプリを提供する会社である。

 次々に事業を立ち上げるリンガムは、すぐにシリコンバレーで存在感を放ちはじめた。やがて彼は、アントレプレナーに共通する特徴に気づいたという。考えすぎ、計画と分析に時間をかけすぎることである。わたしが司会を務める討論会に、リンガムなどのアントレプレナーを招いたときのことだ。「みなさんは考えすぎなんです」。リンガムが金融関係の聴衆に話しかける。「アイデアについて話しあい、理論を勉強し、事業計画を書くために時間をかけすぎて、実際に試す時間が足りないのです」。そして、その弊害を指摘した。「紙の上で完璧な事業計画を仕上げたときには、私みたいな人間が、とっくにあちこちの顧客と契約書にサインを済ませてしまっていますからね」

 そう考えるのはリンガムだけではない。エンデバーの1000人近いアントレプレナーを対象に調査を行ったところ、事業を立ち上げた際、彼らの3分の2が正式な事業計画を書いていなかった。80%以上が半年以内に最初の製品を世に送り出し、約半数がビジネスモデルを最低でも1度は変更した。

 この傾向は、エンデバーのアントレプレナーに限った話ではない。ビジネス誌の『インク』では、毎年「インク500」と銘打って、成長著しいアメリカの企業ランキング500社を発表する。その500社の創業者を対象に行った2002年の調査によれば、新規事業に乗り出す前に正式なマーケットリサーチを行った企業は12%にすぎず、正式な事業計画を書いたケースも40%にとどまったという。事業計画を立てた者の3分の2が、計画書は役に立たなかったと答えた。マイクロソフト、ピクサー、スターバックスは事業計画には従わなかった。インテルの事業計画書は、たったの161文字しかない。「and」やスペル間違いを数えても、それだけの文字しかないのだ。

スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
新・独学術

新・独学術

侍留啓介 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2017年6月

<内容紹介>
「ビジネスに必要な教養」をすべて最速で身につける! 「思考力」「知識」「論理力」「英語力」……仕事に使える知的リソースを最大化する方法とは? 外資系エリートの世界で次々と降りかかる難題を解決するために駆使してきた最も合理的な「頭の強化法」。これが現代ビジネスマンに最も求められる「知性」の磨き方!

本を購入する
著者セミナー・予定

(POSデータ調べ、6/18~6/24)



リンダ・ロッテンバーグ(Linda Rottenberg)

エンデバー(Endeavor)共同創業者兼CEO。
1997年、エンデバーを設立。以来、4万人を超える起業家と面談、審査の末1000人以上の起業家を支援し、その起業家たちが生み出す価値は年間70億ドル、これまでに生み出した雇用は40万人を超える。タイム誌「21世紀のイノベーター100人」、U.S. News誌「アメリカのベストリーダー」の1人に選出。
起業家精神、新興市場、技術革新、リーダーシップについて、最もダイナミックな専門家だとみなされていて、フォーチュン500に名を連ねる企業からも講演の依頼が引きも切らない。また彼女とエンデバーの事例は、ハーバード・ビジネススクールやスタンフォードなどで、ケースとして扱われている。数々の通り名が存在するが、その中でも特筆すべきものはトーマス・フリードマンによるもので、彼はリンダのことを、ベンチャーキャピタリストならぬ、人類初の「“メンター”キャピタリスト」だと名づけた。
夫はベストセラー作家でニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのブルース・ファイラー。夫、双子の娘とともにニューヨーク、ブルックリンに住んでいる。

江口泰子(えぐち・たいこ)

法政大学法学部卒業。編集事務所、広告企画会社を経て翻訳業に従事。主な訳書に『道端の経営学』(ヴィレッジブックス)、『ビッグバン・イノベーション』『考えてるつもり』(ともにダイヤモンド社)、『使用人たちが見たホワイトハウス』(光文社)、『ケネディ暗殺 50年目の真実』『21世紀の脳科学』(ともに講談社)、『マイレージ、マイライフ』(小学館)、共訳に『真珠湾からバグダッドへ』(幻冬舎)など。


THINK WILD あなたの成功を阻むすべての難問を解決する

600社、1000人超の起業家を支援してきた
伝説の非営利ベンチャーキャピタル、エンデバー(Endeavor)。

シリコンバレーから中東、アフリカ、そしてブラジルのスラム街まで、
ありとあらゆる場所で夢に向けてもがく人たちを、
事業の立ち上げ(スタートアップ)から事業拡大(スケールアウト)まで幅広く支援を行う
「世界最大の起業家コミュニティ」だ。
創業から20年を迎えた2017年3月には、
松本大氏、孫泰蔵氏らが中心となり日本でも活動を本格化させ、注目を集めている。

そんな稀有な組織を立ち上げた稀有な創業者兼CEO、
リンダ・ロッテンバーグが初めて明かす「アイデアを形にする方法」をまとめた
『THINK WILD あなたの成功を阻むすべての難問を解決する』から、
そのエッセンスをご紹介しよう。

「THINK WILD あなたの成功を阻むすべての難問を解決する」

⇒バックナンバー一覧