自分をどう呼んでもらうか、「呼び方」の問題にはじまり、指示命令の出し方やミスをどう指摘するかなど、年上部下とのコミュニケーションには多くの戸惑いがある。どんな言い方、接し方をすれば、年上部下のプライドを傷つけず、仕事をうまく回せるのか……。連載第2回は、年上部下との関係を良くするコミュニケーションのルールを紹介する。
(年上部下との関係に悩む上司の実状を探った第1回はこちら

ルール1
呼称は「さん」で統一する

 とあるメーカーの人事課長から相談を受けました。

 定年後、嘱託に転じ、40代の元部下のもとでこれまでと同じ部署で仕事をしている60代の年上部下から、こんな話を聞かされたといいます。

「その60代の嘱託社員は、かつて自分の部下だった年下上司を、これまでと同じように『○○君』と呼んでいたそうなんです。そうしたら、他部署の課長から、『自分の元部下とはいえ、嘱託社員が上司に「君」付けはおかしい。改めるべきでは?』と指摘されたといいます。そこで私が『君』付けで呼ばれていた年下上司に話を聞いたところ、特に不快には感じていないとのこと。当人同士は問題に思っていないようなのですが……」

「呼び方」の問題は、年上部下ができたとき、最初にぶつかる壁でしょう。特に相手が元上司のような場合には、ここでつまずいてしまうと、後々しこりを残すことになりかねません。

 なかには、お互いにどんな呼び方であっても「気にならない」「呼び方など好きにしてくれればいい」という人もいるでしょう。しかし、職場の面々がそのやりとりを見ていて、落ち着かない気持ちになってしまうこともあります。
本人たちの間では、信頼関係ができていたとしても、周囲の感じ方はさまざまです。特に現在は昔と違って雇用形態も多様化していて、派遣社員やパートなど、〝ふたりの事情〟を知らない人が職場の仲間に加わるケースも珍しくありません。先のような職場に、いきなりあなたが放り込まれたとしたら、やはり大いに戸惑いを感じるのではないでしょうか。

 また、最近では職務給導入など実力主義に基づき、数ヶ月、数年単位で上司と部下の入れ替わりのあり得る職場も増えています。そのたびに「君」や「役職名」を変えて呼び合うのは、慣れるにも時間がかかりますし、気まずさが残りやすいのではないでしょうか。

 そこで、年下の人間が上司となる可能性のある職場では、常に「年齢や役職に関わらず、『さん』付けで呼ぶ」というルールを決めておくことをお勧めします。会社と会社といった対外的なやりとりが難しくなるのであれば、ちょっと複雑になりますが、社内のみでの運用ルールでもよいかもしれません。

 そうすることで、年上部下も「年下相手に役職名で呼ばずにすむ」でしょうし、あなた自身も「年上部下から『君』付けで呼ばれて威厳を損なう」おそれを感じたり、「役職名で呼ばれてバツの悪い思いをする」こともなくなるはずです。