経営側の問題はシンプル
先週末の「ダイヤモンド・オンライン」、「ザ・世論 ウィークエンド投票箱」の「あなたならどうする?九州電力やらせメール事件」は大変興味深い調査だった。
既報の通り、九州電力では、佐賀県民向けの説明会とテレビ番組に対して、原発運転再開に賛成する意見をメールするよう、同社社員や関連会社の社員に向けて広く働きかけたことが問題になっている。
社内のメールやイントラネットの掲示板などを通じて、数千人がこの指示に接し、発信元のURLを九電関連以外のものとするべく、「なるべく自宅のパソコンからメールを送るように」という指示を参考としつつ、数十人が玄海原発運転再開につながる意見を送ったようだ。
報道によると、子会社の社員が指示に疑問を持って地元の共産党に情報を持ち込んで告発したことから九電本社の指示が発覚したようだ。社長は、今のところこの「やらせ指示」について関知せず、指示について知っていた最高責任者は先般の株主総会で退任した副社長らしいということになっているようだが、既に幾つかのメディアが社長の辞意を報じており、社長の引責辞任は避けがたい情勢と思われる。
事件の名前は便宜上「九電やらせメール事件」としておくが、この事件を経営側の問題として見ると、コンプライアンスとリスク管理の両方の認識を欠いたマネジメントの極端な能力不足と整理することができる。
数千人に及ぶ自社社員や子会社社員にこうした指示を発することが、経営上どのくらい危険で且つ社会的に不適当であるかということに管理職の社員が思い至らないのだから、ビジネスマンとしてお話にならない。
子細に検討すると、自社や子会社の社員の倫理意識やプライドにまで思いが至らない経営者の貧しい精神性に遡る問題であるのかも知れないし、監督官庁まで含めた電力業界の「メディアはコントロールできる」と思う体質に問題があったのかも知れないが、それ以前に、経営的危機管理能力が全く欠如していた。
はっきり言って、こんなに無能な人たちが関わっていることだけで、原発の「ストレス・テスト」は不合格だと思わざるを得ない。