ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経営のためのIT

経営者は「攻めのIT投資」をどう捻出し、
評価していくか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第69回】 2017年6月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
5

続けるか、止めるかも柔軟に判断する

 時に実施の中断や事業化の可否など、重要な判断をしなければならない場面もあるだろう。確かにイノベーション案件は、成果がすぐに出るとは限らないし、必ず成果が出るとも限らない。アイデア創出やPoCの初期段階では、失敗を恐れず、あるいは、失敗する可能性があることを覚悟の上で「最初のひと転がり」を俊敏に回すことができるようにあまり厳しいチェックを行わない方が良いということも多い。

 しかし、アイデアやコンセプトは良かったものの、なかなか本番稼働や事業化の目途が立たないような案件に、いつまでもイノベーション予算を垂れ流すことがあってはならない。したがって、重要な節目ごとに継続可否を判断することが求められる。

 具体的には、起案時に図5のようなマクロな計画を立て、チェックポイントを定めてそのポイントごとの判断基準(KPI)を設定しておくことが推奨される。そのKPIをクリアできなければ次の段階への投資は行わないという基本的なルールを決めておくことで、透明性のある運営が可能となり、無駄な投資を排除することができる。これにより推進者が自己満足に陥ることなく、変革を確実に前進させていくための組織のモチベーションを醸成することもできる。

 すでにIT投資管理の枠組みを構築し、事前の効果目標の設定や事後の効果測定を確実に運営している企業であっても、その手法では判断することが困難な案件が増えてきていることを感じているのではないだろうか。年度単位で予算を確保し、それを1年で過不足なく消化していくという方法に疑問を抱いてはいないだろうか。また、一旦審議を通過したら最後までやり抜くというIT投資管理のあり方は、過去のものとなるかもしれない。

 一方、基幹業務システムの再構築やネットワークの増強など、従来のIT投資管理の手法が適合する案件がなくなるわけではない。企業は、従来のIT投資管理に加えて、デジタル時代に適合する攻めのIT投資管理の考え方を取り入れることが求められる。その上で、まず投資案件の性質に応じて攻守を見極め、適切な評価方法を選択できるようにしておかなければならない。

previous page
5
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


経営のためのIT

日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

「経営のためのIT」

⇒バックナンバー一覧