睡眠の問題がもたらすのは経済損失だけではない。睡眠不足は、高血圧症や糖尿病、がんや認知症にかかるリスクを高め、放置すれば命取りともなりかねないのだ。

 平均8時間睡眠とすれば、人生の3分の1を睡眠が占めることになる。あらためて、自分の睡眠を見直してみてほしい。

 本特集では、不眠による病気のリスクから身を守るための「守る睡眠」、そして仕事や勉強の効率を高めるための「攻める睡眠」のノウハウをまとめた。以下、いくつか紹介しよう

ベッドで寝付けないときはどうすればいい?

 夜、なかなか寝付けないとき、一昔前までは、眠れないときはベッドで横になっているだけでもいい、といわれていたが、「今の不眠の教科書では、言ってはいけないことになっている」(国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長)。

 作業療法士で脳の機能を生かした人材開発を行っているユークロニア代表の菅原洋平氏によれば、「われわれの脳は、場所と行為をセットで記憶する」。ベッドに入って眠れない状態が何日も続くと、「ベッド」という場所と「眠れない」という行為がセットで脳に記憶されてしまう。その結果、ベッドに入るだけで、眠れないのではないかと不安になり、緊張して目が覚めてしまうのだ。

 三島部長によれば、脳の検査などに使われるMRI(磁気共鳴画像装置)で不眠の悩みを抱える人の脳を見ると、寝室の画像を見た際に脳の覚醒を促す神経活動が活発になるという。このような人たちは、会議室や電車の中など、眠ろうと身構えない場所では逆に眠ってしまう。

 では、寝付けないときはどうしたらいいのか。

 目安として15分くらいたっても眠れないときは、ベッドから出て寝室から別の部屋に移った方がいい。ベッドという場所と眠れないという行為をセットで脳に記憶させないようにするためだ。そして眠くなるまでは再びベッドに入らないようにする。