その後、新店舗を運営する会社の社長に請われたが、日本での成功を夢見て帰国。仕事が定まらず、一転どん底の暮らしを送ったが、30歳で始めた居酒屋が大成功した。

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「オーストラリアのときの製法で作ったサバ寿司が人気で、1000円もするのに1日10本以上売れました。それで可能性があるんじゃないかと思ったんです」

 2007年、サバ寿司を製造販売する「鯖や」を創業。ピザのデリバリーのような専用バイクを「サバイク」と名付け、サバ寿司の配達事業をスタートした。「サバイク」も「鯖や」も右田社長の奥さんが名付け親だ。

「自分たちの思いを伝えるには、ブランドを作っていくか、一点集中でないとあかんと思いました。正直、怖くなかったかといえば、嘘になりますけど、会社を創業したときに奥さんと誓ったんです。どうせやるならやりたいことを楽しくやろう。無理だったらやめればいい、だから、嫌な商売はしない、と」

 ただ、現実の商売は、辛いことや面倒なことのほうが多い。妥協しなければいけない局面に立たされたときには、トップの裁量や経営センスが問われることになる。鯖やはのちに何度か倒産危機を迎えることになるが、創業から変わらぬスタンスが危機を乗り越える原動力になった。サバだけを突き詰めるという覚悟があったから、道が開けたわけだ。

バイヤーをたきつける
強気の営業が奏功

  右田社長は、「お疲れ様です」ではなく、「お疲れサバです(笑)」と挨拶する。そしてSABARの営業時間は11時38分〜23時38分(店舗により異なる)、メニュー数も38種類で店内は38席だ。普段の会話のなかでも語呂合わせを駆使し、店舗をアピールすることで認知度を高める工夫をしている。

 ユニークなPR戦略とブランディングは、鯖やの成功を語るのに欠かせないキーワードだ。

 「一点突破のビジネスを成功させるには、マスコミの協力が必要。それを実感したのが、サバイクでの配達をプレスリリースしたとき、すぐに人気情報番組で取り上げられ、注文が殺到したことでした。オリジナルテーマ曲も作ったらまた取り上げてもらうことができ、鯖やの名前は一気に広まりました」