一見すると何の変哲もないミニカーが、ドアを引っ張り、ルーフを持ち上げ、タイヤをずらしていくことで、たちまちロボットフィギュアに大変身する。タカラトミーのロボット玩具「トランスフォーマー」は130の国と地域で5億個以上の販売実績を持つ大ヒット商品だ。
その始まりは今から33年前、タカラ(当時)が発売した変形・合体ロボットを見た米国の玩具大手ハズブロが、米国展開を持ち掛け、トランスフォーマーと名付けて新ブランドを設立。実在する車に姿を変えられる「ロボット生命体」が、正義と悪に分かれて戦うというストーリーのアニメを作ったところ、大人気となった。アニメは日本に逆輸入され、タカラトミーとハズブロは玩具を共同開発して世界展開するに至ったのである。
関連アニメは約20シリーズに上り、実写映画も今年で5作品目になる一大コンテンツに成長した。
玩具の企画コンセプトからパーツ設計まで手掛けるプロダクトデザイナーチームは10人ほどの精鋭部隊。中でもチャレンジ精神旺盛な期待のエースが、大西裕弥だ。
中小企業が集積する東大阪市出身の大西は、大工の父親と「ものづくりおやじたち」の影響からか、車や機械が大好きな少年だった。
「ものづくりを極める人生を送りたい」と大学では機械工学を専攻し、大手電機メーカーに就職。流体力学などの基礎研究に携わる。その後、退職してカーデザインの専門学校へ進み、研さんを積んだ。