両論併記は生ぬるい!
朝日に殺到した識者の「お叱り」

 実はあまり知られていないが、「偏向」「反日」と叩かれたせいで、近年の朝日新聞は特定の論調に偏らないよう、かなり神経をつかっていた。しかし、長年の愛読者やら一流ジャーナリストのみなさんから「もっとしっかり偏向しろよ」と嵐のようなクレームがきてしまったのだ。

 たとえばわかりやすいのが、2015年10月24日の「難民批判イラスト、差別か風刺か 日本の漫画家が投稿、国内外で波紋」という記事が炎上をしたケースだ。

 大きな批判を浴びた、はすみとしこ氏の「難民」を題材にしたイラストを扱った記事だが、その論調がどっちつかずの両論併記になっていたことで、一部から「こんなレイシズムをなぜ批判しない?」と朝日新聞に批判が殺到した。

 福島第一原発事故の「吉田調書」と、従軍慰安婦問題の「吉田清治」という「W吉田事件」で、世間から激しいバッシングを受け、朝日はすっかり腰抜けになったのではないか。そう憤った左派リベラルのみなさんから、「中立公正とか生ぬるいこと言ってんじゃねえ」と檄が飛んだのだ。

 その代表が、「報道特集」でおなじみの一流ジャーナリスト・金平茂紀さんにインタビューした際に頂戴したこんな「苦言」である。


――危機管理優先がジャーナリズムの勢いをそいでいます。
朝日新聞がそうですね。とりあえず違う意見を載せておこうと、多様な意見を紹介するとのお題目で両論併記主義が広まっていませんか。積極的に論争を提起するのではなく、最初から先回りし、文句を言われた時のために、『バランスをとっています』と言い訳ができるようにする。防御的な発想ではないですか(朝日新聞2016年3月30日)


 要するに、「守り」に入らず、今までみたいにガンガン偏っていきなさいよ、というわけである。このような「叱咤激励」が多く寄せられることによって、「W吉田事件」後、怒られた子どものようにシュンとうなだれていた朝日新聞に、往時のイケイケぶりが戻ってくる。