現行の子ども手当の支給額を10月から始まる新制度において変更し、さらに今年度中に制度そのものを廃止する方針を固めた民主党政権。財源不足を理由とするこの決定もまた、東日本大震災の“余波”として受け止められている。しかし、これまでの経緯を見る限り、やはり政権の見通しの甘さによって国民が右往左往させられている感が強い。子育て世帯やこれから子どもを生む若い世代は、今回の方針転換をどう受け止めているのだろうか。周辺取材を中心に、その「悲喜こもごも」をお伝えしよう。(取材・文/友清哲、協力/プレスラボ)
結局、「子ども手当」とは何だったのか?
さらなる支給額変更と廃止決定に戸惑う国民
「結局、子ども手当って何だったの?」
日本の子育て家庭からは、戸惑いとも憤りともつかない声が噴出している。
現在政府は、9月末に失効する子ども手当のつなぎ法を延長する「子ども手当特別措置法案」を、今国会で成立させることを目指している。その中身は、10月から始まる新制度において、3歳未満と3~12歳の第3子以降の支給額を1万5000円とし、3~12歳の第1子、2子と中学生については1万円に減らすというものだ。
さらに民主党は、来年の通常国会に「児童手当法改正案」を提出し、2012年度から自民党時代の児童手当を復活させ、拡充するという方針も打ち出した。支給に際しては、年収960万円程度の所得制限が導入される見通しだ。つまりこれは、子ども手当の「実質的な廃止」を意味する。
深刻な少子高齢化への対策として、民主党政権が生み出した「子ども手当」。15歳以下の子どもを扶養する世帯を対象に、政府は2010年6月から月額1万3000円を支給してきた。2011年4月からは、当初マニフェストで公約したとおりの2万6000円を支給する予定だった。
しかし、財源不足を理由に、政府はこれを早々と撤回。結局、今年3月に「つなぎ法」を成立させ、この9月まで月額1万3000円を支給することになった。そして、さらに今回の方針転換である。子育て家庭が不安を覚えるのも、無理はない。