本当にそれで大丈夫?」「こうしたほうがいいんじゃない?」そんなふうに言われてしまうことはありませんか?「なぜいつも、干渉されるんだろう……」と悩んだとき、私たちはどうすればいいのでしょうか?
累計20万部を超えるベストセラー著者、林健太郎氏が執筆した『なぜか干渉される人 思わず干渉してる人 あの人と「いい距離感」を保つコミュニケーション術』から「しんどい相手」「心地よい人」に変わる、いい距離感を保つためのコミュニケーションを本記事で紹介します。

「私がやります!」と言ったのに「何もできなかった」とき、「代わりにやりましょうか?」と言われたらどう返せばいいのか?Photo: Adobe Stock

「代わりにやりましょうか?」にモヤモヤする

 誰も悪くない状況で、望まぬ干渉が起きてしまうこともあります。

 イベント企画の仕事をしているAさん。プロジェクトごとにさまざまな業種・職種の人とチームを組むフリーランサーです。

 ある日、Aさんは「明らかに私の落ち度だったんです。相手は全然、悪くないんですけど、でもなんだか、モヤモヤするっていうか……」と、少々長い前置きとともに語りはじめました。話を聞くと、確かに「干渉された」と言うには微妙なケースでした。

 Aさんのチームのメンバーはそれぞれが別組織に属しているので、打ち合わせは毎回、カフェなどに集まって行います。

 ある日、「次回のお店は私が決めますね!」とメンバーに話した後、Aさんは非常に忙しくなってしまいました。

 Aさんが何の連絡もしないまま三日間が過ぎた後、一人のメンバーが気配を察したのか、「よかったら私、代わりにお店を探しましょうか?」とLINEをくれました。

 Aさんは「お言葉に甘えようか、いや、私がやると言ったのだし……」と迷って、結局返信しないまま放置。そして打ち合わせ当日の朝に急いで検索し、良さそうなカフェを見つけて「ここにしよう!」と思ったそのとき、再びそのメンバーからLINEが。

勝手にごめんなさい! もし良かったらここを予約しますけど、どうですか?」というメッセージとともに、別のお店のリンクが貼ってありました。

ありがとう、お願いします! 私がやるべきだったのにごめんなさい。今度恩返しさせてくださいね!」とAさんは明るいトーンで返信したものの……。

「もう、すごく落ち込んでます。調べた作業が無駄になったのはいいんです、私が悪いんですから。むしろ、仲間に気を遣わせたことが申しわけなくて……。自分のふがいなさが情けないです

 私が悪い、申しわけない、ふがいない、情けない、とネガティブワードを連発するAさん。

 とはいえ、お相手のメンバーの方はAさんが落ち込むことなど望んでいないはず。ただ「役立ちたい」と思っただけに違いありません。つまり相手は「叶わぬ願い」を持ったのです。とすると、相手の行為は干渉にあたる、と言えないこともありません。

肩肘を張らず、助けを求めていい

 これは、どうすれば避けられたでしょうか。

 メンバーからのLINE(お店探しの申し出)を受け取った際、Aさん自身がどうしたいか、決めればよかったのです。「ありがとうございます、お言葉に甘えます」なり、「お待たせしてごめんなさい! 当日までに探します」といった明確な意思表示が必要でした。

 では、なぜAさんはそうしなかったのか。それはAさんの中で「役割の固定」が起こっていたからです。

 つまりAさんは「私がやると言ったのだし」ということにこだわって、とっさに選ぶことができなかったのです。

 実際のところ、一度決まった役割はいくらでも変えられます。「やりとげなくては」などと思わなくていいのです。「無責任だと思われそう」という心配も不要。相手から言ってきてくれているのですから。

「助けを求める」はその意味で、干渉されないための知恵の一つです。

 Aさんは、助けが必要そうな気配を放つのみで、何も言葉を発しませんでした。ですから相手は「推測で助ける」という干渉をせざるをえなくなりました。

 しかしAさんから「助けて」と言ったなら、それはAさん自身の決定です。自ら選択したことであれば「ふがいない」なんて思わずに済みます。

肩肘を張らず、意思を表明するのが賢い選択です。

(本記事は『なぜか干渉される人 思わず干渉してる人 あの人と「いい距離感」を保つコミュニケーション術』から一部を抜粋・編集して掲載しています)