残念ながら「たった一日であらびっくり!」という方法はありません。テレビなどで人気の若いアナウンサーだって、持って生まれた才能だけで無駄のない話し方ができているのではないのです。先輩などに毎日厳しく指導してもらいながら、地道に訓練をしています。自分にしっかり向き合う。それを積み重ね少しずつ改善していくしかないのです。

 しかしこの努力を続けていれば、必ず上達することは私が保証します。私の場合は、毎回自分のニュースの放送を見直しながら、最初は気づかずに思わず出ている自分の癖の多さに自己嫌悪に陥りました。次の段階では、本番でニュースを読んでいる最中、癖が出た瞬間に「あ、やってしまった~」と気づくようになりました。そして最後の段階では、癖が出そうになる直前に、そのことばを飲み込めるようになったのです。

 最後にこの「録音→チェック」の方法を続けるためのコツをお伝えしますね。それは、ご自身の話し方の改善すべきポイントがたくさん見つかったら、一度にすべてをよくしようとしないことです。まずはその中の一つ、例えば「え~」というのを半分に減らそう!など、具体的な目標を一つ立ててそれに集中してみましょう。そして少しでも改善したら自分をたっぷりほめるようにしてください。

 自分の話し方に向き合うのは、かなり孤独な作業です。多少自分に甘めで結構です。
「段階を追って少しずつ気長に」の気持ちでのぞんでくださいね。

 

* 心に届く話し方ルール *
録音で改善ポイントをみつけたら、一つずつ直していく

話し方上達の最大のポイント<br />「自分の話し方を録音する」

松本和也(まつもと・かずや)
スピーチコンサルタント・ナレーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から株式会社マツモトメソッド代表取締役。
アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た! 生きもの新伝説」「NHKスペシャル」「大河ドラマ・木曜時代劇」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況など。
現在は、主に企業のエグゼクィブをクライアントにしたスピーチ・トレーニングや話し方の講演を行っている。
写真/榊智朗