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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

経済成長率が電力需要に与える影響

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第27回】 2011年8月25日
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 電力需要は、経済活動水準とその内容に大きく依存する。ところが、前回述べたように、「エネルギー基本計画」(および、その基礎となっていると考えられる「長期エネルギー需給見通し」)における経済成長率の見通しは、過大であると考えられる。

 これらを補正すれば、将来時点における電力需要は、かなり減るはずだ。したがって、再生可能エネルギーに過度に依存することなく、脱原発(あるいは、原子力発電に対する過度の依存からの脱却)を実現できるはずである。

経済成長と電力需要

 では、経済成長に伴う電力使用量の増加はどのようなものだったか?

 【図表1】には、1980年度以降の実質GDP(国内総生産)と電力使用量の推移を示した。いずれも、80年度の値を1とする指数で示してある(ここで、電力使用量とは、「電灯」と「電力」の合計である。2000年度以降は、それまで「電力」として示されていたものが、「電力」と「特定規模需要」に分類されている)。

 この図から分かるように、電力使用はほぼGDPに比例する形で伸びている。

 【図表2】には、電力使用量の伸び率と実質GDPの伸び率との比を示した。いくつかの例外年度はあるが、多くの年において、これは1近辺の値になっている(注)。ただし、2001年度以降は、2近い値になっている年も多い。

 細かい計算をする前に、以下の検討の大まかなロジックを述べれば、つぎのとおりだ。

 仮にGDPの年率成長率が1%下がれば、20年後のGDPは2割以上減少する。上で見たように電力需要はGDPの成長とほぼ同率で増加しているので、GDPが見込みより2割減少すれば、電力需要も2割程度減少する可能性が強い。

 「エネルギー基本計画」では、20年後の2030年における原子力発電は総電力の5割程度と想定されているのだが、仮に総電力需要が2割減れば、原子力による発電を半分程度に落とすことが可能なわけだ。これに加えて火力発電を増強すれば、脱原発を実現できる(ただし、環境基準は達成できない可能性がある)。

 そこで最初に、経済成長率の想定の違いが、2030年におけるGDPの水準にどの程度の影響を与えるかを見ておこう。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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