クエーカー・シティー・キャスティングスの工場で働く従業員クエーカー・シティー・キャスティングスの工場で働く従業員 Ross Mantle for WSJ

【セーラム(米オハイオ州)】平日の毎日午前6時、安全靴を履いたがっしりした体格の男たちがクエーカー・シティー・キャスティングス(QCC)の小さな工場に出勤する。砂型を作り、溶けた金属を流し込み、鉄や鉄鋼の鋳物を研磨する。

 骨の折れる仕事であり、デスクワークにはない危険が伴う。人材確保も容易ではない。誰かを雇うことができても、定着させるのは難しい。政治家はこうした仕事を称賛するが、一般の米国人は敬遠することが多い。

「こんなに大変なところで働きたくないという人が多い」。QCCで働いていた友人の紹介で鋳造の仕事に就いたザカリー・プチャイダさん(25)はそう話す。

 こうした仕事は、ドナルド・トランプ大統領が米国を製造業大国として復活させるために必要だと考えている、根気と体力が必要な労働の典型といえる。

 トランプ氏の関税政策を受け、外国からではなく米国内で部品を調達する動きがすでに出てきており、国内の一部中小メーカーでは受注が増加している。

 米労働省によると、国内の製造業では約50万件の求人が埋まっていない。全米製造業協会(NAM)が今年実施した調査では、製造業の企業の約半数が、人材の採用と定着が最大の課題だと回答した。

 製造業では通常、企業は勤務時間を厳格に定めたシフト制を採用している。米労働統計局(BLS)によると、賃金は民間部門全体の平均を7.8%下回る。1980年には製造業の賃金は3.8%高かった。組合組織率の低下もこうした変化に影響している。