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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

エネルギー計画の見直しは、
想定電力需要の再検討から始めよ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第26回】 2011年8月18日
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 脱原発の議論においては電力需要に関する検討が不可欠だが、現実にはこの側面についての検討は十分に行なわれていない。

 前回、このような問題意識から、総合資源エネルギー調査会需給部会の「長期エネルギー需給見通し」(08年5月)における電力需給見通しの表に検討を加え、「再生可能エネルギーに依存しない脱原発が可能」との暫定的結論を導いた。

 ただし、この議論は、つぎの2点で不完全なものである。

 第1は、環境面の目標(エネルギー起源CO2排出量の削減)が達成できない。

 第2に、経済活動水準との関係で電力需要がどうなるかの検討を行なっていない。

 この連載ですでに述べたように、電力需要と製造業の生産水準との間には強い相関関係があるから、この点の検討は不可欠だ。以下では、この問題についての検討を行なおう。

「エネルギー基本計画」には定量的な記述が少ない

 この議論を行なうには、まず現在の「エネルギー基本計画」(2010年6月策定)がどのような経済活動水準を想定し、その下でどの程度の電力需要を想定しているかを知る必要がある。

 ところが、この計画には、定量的な記述がきわめて少ない。われわれの問題意識に関係のあるものとしては、つぎのような記述があるのみである。

・電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を、2020年までに50%以上、2030年までに約70%とする(現状は34%)。

・2030年までにエネルギー起源CO2排出量を、90年比マイナス30%以上とする。家庭部門のエネルギー消費から発生するCO2を半減させる。

・2020年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す(現状:54基稼働、設備利用率:2008年度、約60%)。2030年までに、少なくとも14基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指す。

 なお、「エネルギー基本計画」で想定されている経済成長率は、2010-20年が年率約2%、2020-30年が1.2%である。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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