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リーダーの決断

ネット事業もリアルな顧客サービスが決め手
ザッポスの伝説

Zappos's CEO on Going to Extremes for Customers

トニー・シェイ
2011年10月5日
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ザッポスという社名は、スペイン語の「ザパトス」(靴)にちなんだもので、文字どおり靴の販売を生業としているが、同社の出発点は、「靴を試し履きせずに買う人などいるはずがない」という固定観念への挑戦だった。そこで、このeコマース企業は「最高の顧客サービスと顧客経験を提供する」ことに集中し、送料と返品の無料化、1年間の返品期間、無料翌日配送など、常識破りの施策を実施してきた。

何より特筆すべきは、コール・センターの顧客サービスである。何千種類もの靴選びに6時間つき合う、深夜営業のピザ屋を探して教える、奇癖の持ち主にも快く対応する等々、同社の顧客サービスは、全米のメディア、ブログ、SNS、ツイッターなどで絶賛されている。その業績も、ドットコム・バブルの崩壊、リーマン・ショックなどの影響にもめげず、創業以来ずっと右肩上がりを続け、小さなeコマース・サイトにもかかわらず2009年の総売上高は12億ドル近い。

本稿は、ザッポスCEOのトニー・シェイが著したDelivering Happiness(現在同社の親会社であるアマゾンで第1位に輝いたベストセラー)の抄録である。

シェビーズのランチで決めたこと

 ザッポス・ドットコムが創業されてから11年の間に、我々は重要な決断に迫られることが何回かあった。そのうちの1つは、2004年の初め、サンフランシスコのメキシコ料理チェーン、シェビーズで昼食を食べていた時に訪れた。

トニー・シェイ
Tony Hsieh
ザッポス・ドットコムのCEO。ハーバード大学を卒業後、オラクルに就職するも、すぐにオンライン広告会社リンクエクスチェンジを共同で起業する。1998年、この会社をマイクロソフトに売却後、その資金でエンジェル・ファンドを立ち上げ、投資先の1つとしてザッポスに関わっていたが、2000年、同社に入社し、CEOとして同社を大きく飛躍させた。著書にDelivering Happiness, Business Plus, 2010(邦訳はダイヤモンド社より発売)がある。

 ファヒータ(肉をタマネギやピーマンと一緒に鉄板で焼いた料理)を食べながら、人生を変えるような選択をすることになるとは想像もしていなかったが、急成長企業にいれば、思いもかけない時に決断を迫られる場面が何度もある。

 当時、ザッポスは創業して5年足らずの会社だった。私は大学の友人(サンジェイ・マダン)と一緒にリンクエクスチェンジという会社を立ち上げ、1998年にこれをマイクロソフトに売却した後、1投資家としてザッポスに関わるようになった。

 靴のオンライン・ショップというアイデアを聞いて最初は、ろくでもないネット事業の典型だと思った。しかし、ザッポスの創設者ニック・スインマーンが説明するには、アメリカの靴市場は400億ドル規模で、そのうち通販が占める割合はすでに5%あるという。

図表1 「顧客の笑顔は成長をもたらす」
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 こうして、数あるエンジェル投資の1つとして始めたものが、私の仕事になった。そう、私は2000年、ザッポスの1員になったのである。

 20世紀の終わりにドットコム・バブルがはじけたが、ザッポスは何とか生き延び、商品の総売上高も1999年から2003年にかけてゼロから7000万ドルになった。ただしその間、資金不足と悪戦苦闘の毎日だった(図表1「顧客の笑顔は成長をもたらす」を参照)。

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