日本人にとって、オリンピックでの獲得メダル数は、自国の威信がかかったもの。しかし、実は「オリンピック憲章」には、「選手間の競争であり、国家間の競争ではない」旨が明記されている。ロシアや北朝鮮にも通じるような、日本人の国威発揚ムードこそが、東京五輪がらみで議論が二転三転したり、新国立競技場建設で過労自殺を起こすなどの混乱につながっているのではないだろうか。(ノンフィクションライター 窪田順生)

「音頭」にすればヒット確実!?
クリエイターたちの甚だしい勘違い

世界を見渡せば、自国の獲得メダル数が増えた減ったで大騒ぎをするのは、国の威信を大切にする全体主義的な国ばかり。戦前戦中の「国威発揚」を彷彿とさせる東京五輪のムードが原因で、新国立競技場の工事現場などには酷いしわ寄せが行っている 写真:長田洋平/アフロスポーツ

 新国立競技場の建設現場で働いていた23歳の建設会社社員が「過労自殺」をした。

 遡れば、エンブレムや競技会場を巡る騒動などなど、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会のやることなすことは「混乱」を引き起こしてばかり。なぜこうした事態を招いてしまうのか。筆者はかねてから不思議だったのだが、「こういう発想」なのかということがよくわかる出来事があり、妙に納得をした。

 明日、正式にお披露目される「東京五輪音頭-2020-」のことだ。

 先月24日におこなわれた制作発表会によると、三波春夫さんらが歌って記録的ヒットとなった1964年バージョンの歌詞を現代版にアレンジし、石川さゆりさん、加山雄三さん、竹原ピストルさんらが歌っているということで、組織委員会は、「全国の夏祭りや盆踊りで踊って大会をムードを盛り上げてほしい」(日テレNEWS7月24日)と話しているという。

「狙い」はわからんでもない。

 日本の一部クリエイターたちは「音頭」をつくれば「ブーム」ができる、という信仰にも近い思い込みを持っている。「ドラえもん音頭」「ポケモン音頭」「ルパン音頭」という人気アニメはもちろん、「マツケンサンバII音頭」「東村山音頭」「タケちゃんマン音頭」という人気タレント由来のものも数えきれないほどあり、最近ではauのCMキャラである「三太郎」まで「三太郎音頭」を出した。

「東京五輪音頭-2020-」でムーブメントをつくりたいという意気込みは十分に理解できるが、残念ながら、1964年ならいざ知らず、現代では「残念な結末」を招く可能性が高い。

 過去、日本を惨敗に導いた旧日本軍にも見られた「国民総動員」の発想だからだ。

 日本が世界に誇る伝統文化である「盆踊りの音頭」をディスられたと怒りに震える方もいるかもしれないが、「東京五輪音頭」は「日本の伝統文化」とは言い難い側面がある。