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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

意思決定において意見の不一致こそが
問題への理解を促す

上田惇生
【第255回】 2011年8月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
1890円(税込)

 「成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 ドラッカーは、意思決定の過程では意見の不一致が必要だという。理由は三つある。

 第一に、組織の囚人になることを防ぐためである。組織では、あらゆる者が、あらゆる決定から何かを得ようとする。特別のものを欲し、善意の下に、都合のよい決定を得ようとする。

 そのようなことでは、小さな利害だけで決定が行なわれる。問題の理解抜きでのそのような決定の仕方は、きわめて危険である。

 第二に、選択肢、つまり代案を得るためである。決定には、常に間違う危険が伴う。

 最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違うこともある。決定のプロセスにおいて他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討ずみのもの、理解ずみのものを持つことができる。

 逆に、全員一致で決めていたのでは、その決められたものしか案がないことになる。

 第三に、想像力を刺激するためである。理論づけられ、検討し尽くされ、かつ裏づけられている反対意見こそ、想像力にとって最も効果的な刺激剤となる。すばらしい案も生まれる。

 明らかに間違った結論に達している者は、自分とは違う現実を見て、違う問題に気づいているに違いないと考えなければならない。

 もし、彼の意見が知的かつ合理的であるとするならば、彼はどのような現実を見ているのかを考えなければならない。意見の不一致こそが宝の山である。意見の不一致が問題への理解をもたらしてくれる。

 いかなる問題であれ、意見の不一致が皆無などということは、奇跡である。いわんや、四六時中奇跡を起こしているなどありえないと心得るべきである。それでは、社長が一人いればよいことになる。

 後で不祥事となった行動の多くが、ろくに議論もされずに決められていることは偶然ではない。

 「成果をあげる者は、何よりも問題の理解に関心をもつ」(『経営者の条件』)

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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