黙る円高ウハウハ派

 今回はいかに日本が世界から高く評価され愛されているかについて語りたい。これは私が1年近く日本を離れ、世界各地から日本を客観視した冷静な感想であり分析である。

 日本を苦しめると言われる円高。このまま欧米の財政・経済がさらに低迷を続ければ、円はさらに評価を高めてしまうだろう。日本中、円高を何とかしてくれという声ばかりに聞こえる。私は悪いことばかりではないと思う。円高不況が叫ばれる中、円高をチャンスに思う企業は実は少なくない。円高を活用して世界に投資して大きなチャンスを獲得している企業も人もたくさんいる。

「なぜ円が高くなっているのか?」という問いの回答は色々ある。世界メジャー通貨の中での消去法としての評価というのも正解だと思うし、デフレ下の通貨なので実効為替レートでみると、まだまだ円安という評価も妥当だと思う。それらに加えて、私は円高の背景にある理由として、世界の日本への高い評価と日本好きがあると思う。

 円が上昇し続けたこの1年間、私は世界中を訪れたが、行く先々で、本当に多くの世界中の人が日本を高く評価し、日本が好きであることを再認識した。私はこの日本への想いが円高の背景にあると思う。

まだまだ凄い日本の国力

 私は2つの大学の研究員を経て、アメリカで最古のシンクタンクに在籍している。これらの機関では、世界各国の力を分析するとき、正確にデータに基づいて行う国力分析が盛んである。日本にいる友人たちは「日本は終わった」「もう力はない」とよく連絡をくれる。彼らの多くは各界のリーダーである。多分政局に関する報道等で国家の将来に嫌気がさしているのだろう。しかし正確に物事を見て欲しい。アメリカの研究機関での冷静な評価は全く違う。多分こちらが世界の日本に対する正確な評価だろう。

 国力分析の手法に、細かい相違はあれど、概要は同じものだ。それは、各国の諸要素、つまり、面積・人口・軍事力(防衛支出)・経済力・技術力・教育力・文化的影響力、法や制度の信頼性等々を足し合わせるのである。

 面積は世界62位。しかし、これはG7ではドイツ、イタリア、イギリスを抑えて4位である。人口では世界10位。G7ではアメリカに次いで2位である。軍事支出(防衛費)でも世界7位でG7でも5位である。経済規模は3位。ドル建て1人当たりGDPは世界16位。今年の為替レートでいけば間違いなくトップ10に入るだろう。

 個人金融資産の総額ではアメリカに次いで世界2位。日本にはお金持ちがあまりにいないと自虐的に言われるが、億万長者(1億円以上の資産を持つ個人)の数は世界2位だ。09年度の世界経済フォーラムによるランキングによれば、日本は技術革新能力が世界1位、科学者や技術者の活用しやすさが2位、消費者の洗練度も1位である。CNNが発表した世界美食ランキングに日本の寿司が4位にランクインしている。政治・経済・文化の各影響力を総合した都市ランキングでは、東京はニューヨーク、ロンドン、パリに次いで世界4位だ。