「その結果、昔はITにかかわっていたけれど、最新のテクノロジーはさっぱりわからないCIO、CTOの経営判断ミスや、オンプレミスのシステムだけを信奉し、クラウド活用にはいまだ抵抗感が強い部長クラスの存在など、複合的な要因が変革を妨げる壁となりうることが認識できたようです。デジタルトランスフォーメーションへの対応で自社の未来はどう明るくなるのかといったポジティブな未来像を描くより、むしろ対応できず最悪の事態に陥った未来を想定し、それを招きうる課題を潰していくことのほうが有効かもしれません。つまり、最悪の未来を想定することで危機感を持ち、現在に戻って新しい未来を創造して行くのです」

 このワークショップでは、20代のペルソナを選択したグループが「変われない会社」に見切りをつけてスタートアップを立ち上げ、2030年までに急成長させて、破たんした元の会社を買収するというシナリオを発表。60代CIOを選択したグループは、管理職が変化を求める20代社員から薫陶を受け、壁を打ち破っていくという解決策を提案した。いずれにも共通するのは、日々の生活の中でデジタルトランスフォーメーションを体感し、変化を厭わない若者への期待である。

「いまの若手社員には、たとえリスクを取っても、新しいことにチャレンジして世の中を変えていきたいという強い思いを持った人材が多い。そうした若者の変革意識や意欲をうまく採り入れながら、『変わり続けていく会社』をつくることが、いまの日本企業には求められているのではないでしょうか」

外部との協業関係の深化が
変革を巻き起こす

 若手が企業に意識変革をもたらした例のひとつとして澤谷教授が挙げたのが、家計簿アプリを提供するマネーフォワードの事例である。

「同社はかつて10項目に及ぶ企業としての行動指針を掲げていましたが、中途入社した若手の女性デザイナーから、その内容があまりにも多岐にわたり、厳格すぎるのではないかという意見が出されたそうです。そこで、UX(ユーザー・エクスペリエンス)などのヒューマン・コンピューター・インタラクション技術を専門とするこの女性社員が中心となって、『ユーザーフォーカス』『テクノロジー・ドリブン』『フェアネス』というシンプルでわかりやすい3つの行動指針に作り直しました。創業者が決めた行動指針に対しても忌憚のない意見が言えて、企業側もそれを柔軟に受け入れる。そうした風土があってこそ、デジタルトランスフォーメーションへの対応も可能となるわけです」