星野 さまざまな施設の運営を担当させていただいたり、再生を担ったりして感じたのは、そもそも育成の前に、個々人が持っている能力を100%出せているケースが少ないんですよ。たいてい、10ある能力の6くらいまでしか出せていない。教育が10を15に伸ばそうと行われるものだとすれば、まずは10を出し切ることからです。

 いまの本人が得意としていることを出してもらって、それを会社としても評価できればモチベーションにつながる。つまり、育成よりも発揮です。それが星野リゾートでも人事政策の一番の柱。そして、当人に学びたいことができたときは、積極的にその機会を与えます。

生産性向上のために「無駄な時間」を削ってはいけない

――個々人の成長という点では、日本全体として「生産性」を高める方針を打ち出しています。社員のモチベーションを維持する、あるいは生産性を高めるために大事だとお考えになっていることはありますか。

星野 意外に聞こえるかもしれませんが、生産性や効率を上げようとする際に削られがちな「無駄な時間」こそが大事だと考えています。それがスタッフのモチベーションに貢献していたり、お互いを理解するコミュニケーションにつながっていたりすることもある。

 だからこそ、私の中で今考えているテーマは「必要である『無駄な時間』は何か」をきちんと定義することです。生産性向上や効率化であらゆる時間を削ってしまう中に、必要な無駄が含まれているとすれば、それがきっかけで社員が退職してしまうかもしれない。

 それも全て、社員のモチベーションを軸に要素を考えれば明らかです。無駄話やコミュニケーションが相当にモチベーションに効いているのであれば、その最適化を考えたい。特にサービス業においては「必要な時間」を定義し、それをもって生産性向上を体現できる組織であることが大切だと思うのです。

 モチベーションのレベルが顧客満足につながれば、ひいては収益の持続性や向上にもつながります。チームワークも、ケン・ブランチャード理論の「自立した自由な組織」という考えが基点です。僕らはそれを「良いチーム」と呼んでいます。フラットに意思決定できるチームであることが重要なんです。我々が目指しているのは、自立的な意思決定が現場に任せられる組織です。