親世代と違って
「お金が貯めにくい環境」になっている!
当コラム「40代から備えたい!老後のお金クライシス」がスタートして丸3年が経つ。連載タイトルを考えたのは編集部の担当さん。「老後のお金に不安を持つ40~50代が増えてきているので、老後資金作りのあれこれを伝えて、読者を少しでも安心させてください」と依頼を受けた。
その後、「下流老人」「老後破産」といった言葉がメディアをにぎわせ、老後不安はいっそう高まる。経済的に自立できずに、生活保護など福祉のサポートがないと暮らしていけない人を指すのだが、実は、大企業勤務であっても今の40~50代に「下流老人予備軍」はいる。
漠然とした不安を感じつつも、70代以上の親世代を見て「たぶん、何とかなるだろう」と考える(考えたい)人は多い。しかし、親世代とはお金を取り巻く環境が大きく異なる。危機感を持って、「何とかしよう」とアクションを起こさない限り、「何ともならない」のが現実だ。誰にでも下流老人になる可能性があることを知っておきたい。
とはいっても、日々お金を使いながら将来に向けて貯蓄し続けるのは容易ではない。FPになって21年になるが、長年家計相談を受けてきて、10年、15年前に比べると、同じ世代でも貯蓄ができていないことを実感することが増えてきた。
私は、企業や自治体の社員・職員向けのライフプランセミナーの講師を受託しており、セミナー後に家計相談を受ける人も多い。長くセミナーを担当している企業なら、社員の貯蓄動向も把握できる。
特に退職直前セミナー参加者の貯蓄額の変化は顕著で、この10年で大きく減っている。つまり、老後資金を貯められていないのである。セミナー中に「この会社にお勤めの場合、企業年金を考慮すると老後資金は○○○万円がひとつの目安です」と言うと、ため息とともに困った顔をする参加者が毎年増えている。
老後資金の目安は、貯めるのが無理なほど多額の金額を提示したわけではない。でも、貯められていない。親世代のときと何が違うのかを具体的に考えてみた。経済環境に世代特有の事情を加えると、今の40~50代が貯蓄できない要因は、おもに5つあると思う。