量産化が難しい最大の理由は、HCCIが実現できる環境の幅が狭いことだ。つまり、外気温が低い状態から高い状態まで、またエンジンの回転数が低い状態から高い状態までなど、自動車が世界各地で日常的に使わる様々なシーンに対応させることが難しいのだ。

 では、その難題を、マツダがなぜクリアできたのか?

SKYACTIV Xの燃料についてのマツダの発表資料・英語版 Photo by Kenji Momota 拡大画像表示

 その理由は、限られたリソースのなかで愚直に「究極の燃焼」を追求したことだ。

 マツダは2012年から導入しているガソリンエンジン「SKYACTIV-G」とディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」の基本原理を突き詰めることで、内燃機関の理想形である「SKYACTIV-X」へと到達した。そもそも、「G」はガソリンエンジンとしては極めて高い圧縮比、一方の「D」はディーゼルエンジンとしては極めて低い圧縮比という、自動車の技術領域では“変わり種”だ。

「X」は、「D」のように圧縮着火した希薄ガソリン燃料の燃焼状況を、各シリンダーに装着した圧力センサーで詳細に把握し、そのデータを専用コンピュータ(ECU)で膨大な演算を行うことで「最適な燃焼にいま何が必要か?」を把握している。状況によって、燃料噴射量を変え、また通常のガソリンエンジンのようにスパークプラグを使って点火タイミングを変えるケースもある。

マツダの技術系役員が勢揃い。左が取締役・専務執行役員の藤原清志氏、その隣が「ミスターエンジン」、常務執行役員の人見光夫氏 Photo by Kenji Momota

 こうした膨大なデータと真正面から向き合ってきたのが、ミスターエンジンとマツダ社内外で呼ばれる、SKYACTIVエンジン技術の生みの親、常務執行役員・シニア技術開発フェローの人見光夫氏だ。今回、同氏による技術プレゼン、そして個別のインタビューを通じて、筆者としては改めて“生真面目なマツダ哲学”を感じた。

 また、今回試乗した「X」は排気量が2.0リッター、圧縮比は16対1。そして、空気とガソリンの混合比率である空燃比は、理論空燃比といわれる14.7対1の2倍以上の「30台」(人見氏)という。

 なお、「X」の燃焼理論を、マツダはスパークプラグを併用した圧縮着火として、SPCCI(スパーク・コントロールド・コンプレッション・イグニッション)と呼び、理想的な燃焼を「コントロール(制御)」していることを強調している。