バラバラの「期待」を整理する

 放っておけば、聴衆は勝手に期待します。

「自分に合った話が聞きたい」「成功や失敗の具体的な事例を知りたい」「細かいことより新しいコンセプトが聞きたいな」

 そして、同じプレゼンテーションに対して、部長以上の幹部クラスからは「考えが整理されて大変良かった」と評価され、現場スペシャリストからは「話が抽象的で役に立たない」と酷評されます。だったらと具体論を詳述すると幹部たちには「個別の経験を語られても意味がない」と一蹴(いっしゅう)される始末……。

 2回ほどやって、プレゼンテーション内容の調整で対応するのは止めました。「現実」より、「期待」を変えるしかないと悟りました。

 一番簡単なのは「○○対象」と聴衆を絞ること。ただこれでは「IT展示会」の主催者のニーズには応えられません。なので、最初に挙手してもらうことにしました

「あなたの立場を教えてください」「次の内、どれに一番近いでしょうか?」

「(1)ユーザー企業のユーザー部門もしくは経営者、(2)ユーザー企業のIT部門、そして、(3)ITベンダーもしくはコンサルティング会社、つまりアクセンチュアからすると競合他社ってやつですね(笑)」

 そして、挙手の直後に宣言します

「今日の講演は、ユーザー企業IT部門のみなさん向けです」

「ユーザー部門の方々は、IT部門の本音と思って聞いてください」

「IT系企業の方々やコンサルタントのみなさんにとっては、アクセンチュアがどうユーザー企業に売り込んでいるのかの研修って感じですかね(笑)」

 後は、ひたすら宣言したターゲットに向けた話として集中します。

「ホント、ユーザー部門って後でコロコロ要望を変えますよねえ」「でもそれにも理由はあるんです」「特にCRMの世界だと……」

 最初の挙手と宣言。これだけでも「変な不満」はぐっと減ります。