「内訳はさまざまです。うつ病で治療していた、あるいはうつ症状はあったものの治療はしていなかったという状況で自殺未遂に至ってしまった人もいるし、人間関係や身体的病気など、いろいろな問題を抱えて追い込まれるなかで、自殺未遂をする直前に、何かの精神疾患に該当する状態になったという人もいます。

日野耕介(ひの・こうすけ)医師 横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター 助教(高度救命救急センター担当)

 いずれにしろ当センターの統計では、自殺をはかる直前の人たちは、9割ぐらいが何かしらの精神疾患に陥り、精神科医の手助けを必要とする状態にあるといえます」

 救急搬送される人のうち、自殺で搬送される人の割合は10%以上。その中の9割超もの人が、精神科医の手助けを必要とするということは、逆に考えれば、精神科医が救命救急と連携し、早い段階から自殺未遂者にかかわって再自殺予防に取り組めば、救える命は少なからずあるということにもなる。

 目下、こうした考え方は、救命救急にかかわる人の共通認識になっており、精神科と救命救急の連携が全国で進められている。

 横浜市立大学市民総合医療センターは、そのトップランナーだ。

 では具体的に、精神科医はどのように自殺未遂者と向き合い、手助けをするのだろうか。日野医師に聞いてみた。

わずか2~3日で
やれるだけのことをやる

――そもそも自殺に至る前に、早く精神科を受診していれば、自殺はもっと減らすことができるのではないでしょうか。

「自殺に限らず、予防の原則は一次予防。何か問題が起きる前に予防するのが理想ではあります。自殺についても、そこに至る前に精神科につながり、その人が危機的状況であることに医師が気づいて対応できれば、一番いいのかもしれません。

 しかし、精神疾患への対応さえすれば、自殺を防げるわけではありません。自殺に追い込まれる人は、さまざまな問題を抱え、苦しむうちに精神疾患になり、自殺に至るという場合も非常に多いのです。だからむしろ、精神疾患にかかる前の問題を抱えた時点で、周囲が状況に気づき、対応していただくのが理想だと思います」