好奇心・柔軟な受け止め方が大事

 大手の会社で部長職まで昇進して、実務能力もあると周囲からも評価されていたAさん(62)も、過去の職歴を活かせそうな求人先に履歴書を何通書いても面接までたどり着けなかったと述懐していた。

 一方で、ある程度希望する組織で働き始めた人を取材すると、今までの上司、先輩、友人などのツテを頼って見つけている人が多い。銀行を退職した人は、行員の出向先にするには少し基準に満たない会社を過去の上司から紹介してもらったと言っていた。

 何人もの話を聞いていると、日本の多くの会社では、それほど能力やスキルを求めていないので年齢が判断の基準になっている。その半面、人柄とか一緒に気持ちよく働ける人を求めていることが見えてくる。

 考えてみれば、健康で働く意欲もあり、能力もあって信頼できる人物なのに、年齢が原因で自らが求める仕事に就くことが難しい現実がある。何度ももったいないと感じる場面に遭遇した。逆に言えば、定年退職者専門という新たな人材ビジネスの芽がここに隠れていると言ってもいいだろう。

 取材で興味を持ったのは50代前半で早期退職して、ハローワークや民間の人材紹介会社で職を探していたBさんのことだ。

 彼は私から見てもまじめで人柄も良いが、書類選考や面接で何度も落とされた。彼も「年齢のネックは大きい」と語っていたが、結局ネットを中心に営業を展開する印刷会社にアルバイトとして採用された。

 その会社ではすべてが現場なので接客から伝票作成、物品の運搬など何でもやらないといけない。忙しい時には、社長も正社員もパートも関係なく、全員で梱包などの力仕事にも取り組む。逆に仕事が暇な時には勤務時間内でも帰ることがある。また購入した物品の受け渡しも、大手企業のように厳密な本人確認まで求めないことも驚きだったという。

 大企業に在籍した彼の目から見ると新鮮なことが多く、いろいろなタイプがいるアルバイトの人たちと話すのが楽しい、というのが働く動機になってもいるという。短期間でいろいろな仕事をやってみるのも悪くないと思い始めたそうだ。

 またスーパーで商品の運搬や整理に携わっている人は「今までは40年間デスクワークだったが初めて身体を使う仕事についてみて、体重も減って爽快感もある」と語る人もいた。

 こうした話を聞いていると、どういう仕事に就くかも重要であるが、仕事の中での本人の受け止め方も大切であると思い知る。