小田急線沿いの火事現場近くに走行中の電車が突入し、電車の屋根が燃えるという事故が起きた。消防士も警察署員も運転士もマニュアルどおりのアクションをしたにもかかわらず、なぜこのような本末転倒な事態に陥ってしまったのか。そこには管制不在という深刻な問題がある。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口博)

マニュアルどおりにやったのに
本末転倒な事態に

運転士や消防士、警察官など、現場のスタッフたちは職務に忠実に動いたにもかかわらず、結果として火災現場近くに電車が止まってしまい、屋根が燃えるという事態を引き起こしてしまった原因は、一体どこにあるのだろうか?

 東京渋谷区の小田急線沿いの建物から出火、走行中の電車が火災現場の近くで停止、電車の屋根に火が燃え移ってしまい、約300人の乗客が避難したという事故が起きてしまった。

 この報道を知った多くの人は、よりによって火災現場の近くに停止することはないだろうと思ったに違いない。私もその1人だ。「十分手前で停止できなかったのか」「火が燃え移らない程度の速度で通過してしまうという方法もあったのではないか」という声が聞こえてくる。

 不可思議に思える話だが、どうやら、次のような事情があったらしい。最初に、消防隊からの要請を受けた警察署員が現場近くの踏切の非常停止ボタンを押した。それにより、一番近くを走っていたこの電車に非常ブレーキがかかり、自動的に停止。停止した場所が火災現場の横だった。非常ブレーキがかかると、さまざまな確認や操作が必要になるため、すぐに電車を移動できず、その間に飛び火してしまったというのだ。

 消防士が火災現場近くに線路があることに気づき、電車を停止させるべきだと考えたことも、警察署員が非常停止ボタンを押したのも、電車の運転士が非常ブレーキ作動後に所定の確認や操作をしたことも、マニュアルにのっとった、あるいはさらに機敏な行動だったに違いない。

 にもかかわらず、現実に起きたことは、こともあろうか火災現場付近に電車を突っ込ませるという、恐ろしい事態になってしまったのだ。